純

メメントの純のレビュー・感想・評価

メメント(2000年製作の映画)
4.0
記憶がこんなにも不平等だから、わたしたちは超えられない過去を生み出してしまうんだろうな。記憶障害を持つ主人公に限らず、わたしたちみんな、本当は何が正しいのかわからない。心をえぐったあの出来事が今も記憶を左右しているのを、時間の流れさえ狂わせてしまうのを、脳みそのどこかで感じている。悲鳴が聞こえる。

一番初めのシーンに、この映画の構成や設定、工夫がすべて組み込まれていて感動してしまった。逆再生や色の使い分けに関してはもう改めて述べる必要もないかなと思うから、わたしの心に刺さったコンテンツをひとつ記しておこうと思う。

努力って何なんだろう。走り続けて、信じ続けて、主人公も奥さんも、ここまで残酷にすれ違わないといけなかったのはどうして?お互いがお互いを失って、ふたりとも昔を取り戻せると信じていて、でもこの映画みたいにふたりの人生は逆再生されないんだよね。決して。あの夜に戻ってしまう。あの夜から始まってしまう。寂しさと不甲斐なさで胸が詰まりそうになって、怖いを通り越してなんだか悲しくなってしまった。こんなはずじゃなかったじゃない?全部。本当に何もかも。

人生があまりに頼りなくて、何にしがみついていたらいいのかわからなくなる。世の中には悪意を振りまくひとや、利用してやろうという気持ちで近づいてくる意地悪なひとはたくさんいて、だから居場所を取り戻したかっただけなのにな。幸せは簡単に逃げてしまうから、わたしたちは何度でも追いかけないといけないね。そして知らないといけない。同じ幸せは、決して戻ってこないということ。
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