シェパード大槻

天国と地獄のシェパード大槻のレビュー・感想・評価

天国と地獄(1963年製作の映画)
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芸術的に良い映画は半ば退屈なものと思っていました逆に、楽しい映画は芸術的にくだらないと思っていました。しかし本作に芸術とエンタメの両立を見ました。何故?
艶やかなセリフ。素敵なまま効果的でもある音楽。桃色の煙。物語を進めようという下心が見えてこない。構図や演出に有機的な美しさ。

地獄人は犯罪によってしか天国人に関係していけないのか。能力とは関係のない何か強力な分断。黄金町のシーンで犯人は"こちら側"なのか?と思ったけど、いえ分断は権藤と犯人の間にもあり、犯人とジャンキーの間にもある。でも本当は、権藤も工場上がりなのであって権藤と犯人は綺麗な対立関係とはいえない。2人の違いは生まれでも賢さでもない何なのか。

踊りながら薬物取引するシーンと、犯人に手紙を渡した刑事が花束を持ってUターンするシーンと、タバコとうちわの警察会議シーンイイ。ガラスに2人の顔が映るシーンは『死刑にいたる病』でその技巧に感動したがここにあったのか。あたし昨日、藤沢から江ノ電に乗った!