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ワンス・ウォリアーズのjnkのレビュー・感想・評価

ワンス・ウォリアーズ(1994年製作の映画)
5.0
マオリ族はニュージーランドの先住民で現在ニュージーランドの人口の10パーセントほどを占め、リータマホリ監督もマオリ系ニュージーランド人で現代のマオリを描いた本作がデビュー作。
原題は〝ONCE WERE WORRIORS〟で、かつて戦士だったという意味だけど、マオリ族というのは戦闘民族で、それ故に差別されたり奴隷にされたり戦争の時にイギリス人に利用されたりしていた。

そんな中でマオリとしてのプライドを持ち、闘う場所がないからあちこちで喧嘩したり奥さん殴ったりするのが本作の主人公。主人公だけじゃなくスラムのマオリ仲間にそんなのがゴロゴロいて暴力も貧困も差別も陰惨に描かれる。暴力は暴力のための暴力で特に救いがないし、差別されてるマオリ族の中でも女性蔑視が行われてるあたりの煉獄感描写に容赦がない。
非情にビジュアルで一度見たら忘れられないシーンの連続だけど、マオリ族の伝統であるハカの使われ方には感動せざるを得ない。
ラグビーでもお馴染みの〝カマテ〟は闘いの舞いのイメージが強いけど、元は生の喜びと感謝を表現したもので、劇中での使われ方も人間の気高さを感じさせられてやばい。
「ハカで大切なのは最初の動きだ。先祖の魂に手を伸ばし体の中に引き込むことだ」
のセリフの通り始まった瞬間に魂を鷲掴みにされる。

物語の肝はクソ主人公の奥さんもマオリの血を引いていることで、血だけでなく魂も受け継いでいるために真の誇りも戦士として恐怖に打ち勝つ力もあり、腕っぷしだけ継承して暴れてるだけの旦那とどちらが強者なのかは明確。
とかく美化されがちな伝統というものの本質を抉りだし、より普遍的なメッセージになっていて誰にでも刺さる。
原作小説とは大きくストーリーが異なるけど、よりストレートに伝えるべきことを伝えてくるナイス改変だと思う。
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