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ストレンジャー・ザン・パラダイスのtomひでのレビュー・感想・評価

4.0
大好きなジムジャームッシュ監督作品。過去2回はビデオで鑑賞。今回レトロスペクティヴという企画で「ストレンジャーザンパラダイス」が大画面で観られるというので劇場へ。

ニューヨークに住むウィリーの元にいとこのエヴァが訪ねてきて、ウィリーの友人エディと共に旅をする話。映画の展開としては劇的な事は何も起こらない。とても静かな映画。画的にもモノクロでシンプルな画面構成、刺激的な画は一切ない。

ニューヨークに訪ねてくるエヴァをうっとうしく思いながらも、人並み程度の情はかけるウィリー。ギャンブルでその日暮らしをしているウィリーを胡散臭く感じているエヴァ。

画面も乾いているが、出てくる登場人物もめちゃくちゃドライ。そんな乾ききったカラッカラの地面に水を一滴二滴と垂らしてその濡れ模様を楽しむような映画(笑)

性格的にも趣味的にも交わりようのない二人が僅かに繋がっていく感じ、いとこでありながらほぼ他人のような二人がちょっとだけ相手を思っていく感じ、微細な優しさ、その反対の冷たさ、そしてその両方の感情が大きく溶け合う事もなく交差していく感じ…。観ているこちらの感情を無理に昇華させようとしないジャームッシュの演出。

観ている間に少しずつ引き込まれていき、ラスト付近ではこちらが完全に水分渇望状態になっているのだが、それも綺麗にかわされ「あぁ」というなんとも言えない気持ちでエンドロールを迎える。

ジャームッシュ作品の中では今でもこの「ストレンジャーザンパラダイス」が一番好き。
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