ウォン・カーウァイ監督の香港映画が、4kレストラ版で期限限定の上映を開始して以来、私の中での「香港映画」マイブームが始まってしまい、止まらない。
ウォン・カーウァイ監督を知ったのは、「恋する惑星」だが、その数年前に公開されていた「欲望の翼」は、2003年自らこの世を去ったレスリー・チャンが最優秀男優賞を撮った作品だった。
1960年代の香港を舞台に若者達の屈折した恋愛模様を描いた青春群像劇。
「脚のない鳥がいるそうだ」ひたすら飛び続け、疲れたら風の中で眠り、生涯ただ一度地面に降りるーそれが最期の時。
ヨディが自分をその鳥に例えているなら何と悲しい運命だろう。そんな儚く脆い人生を、レスリー・チャンが魅力的に演じている。
18歳で養母に育てられていたことを知ったヨディは、自分の実の母親を知らないことに複雑な気持ちでやるせない思いを抱えていた。
サッカー場の売り子のスーは、そんなヨディと恋仲になるが、元々プレイボーイのヨディは、彼女の元を去り実母を探しにフィリピンに行ってしまう。
そんな傷心のスーに恋する警官のタイド。また彼も恋を実らせることなく、夢だった船乗りになるため、香港を出る。
フィリピンで思わぬ形で出会うヨディとタイドだが、ヨディはマフィアの銃弾で帰らぬ人となった。
最後のワンシーン、突如トニー・レオンが登場するのだが、当初2部作にしようとしていたウォン・カーウァイ監督による演出だったらしい。
残念ながら2部作にはならず、2000年新たな物語「花様年華」として公開されている。
46歳の若さで自らこの世を去ったレスリー・チャン。「欲望の翼」で演じた不安定で崩れ行く人生が、彼自身の生き様と重なり、切ない気持ちにもなった。