せんきち

贖罪のせんきちのレビュー・感想・評価

贖罪(2012年製作の映画)
4.0

田舎町で起きた小学生女児殺害事件。犯人の目撃者はその女児エミリの同級生女子4人。彼女達は犯人の顔を思い出すことが出来なかった。犯人探しは暗礁に乗り上げる。エミリの母は4人を自宅に集めこう話す。ー「あなたたちを絶対に許さない。必ず犯人を見つけなさい。それができないのなら、わたしが納得できる償いをしなさい」ー

15年後、成長した4人がする贖罪とは...

全5話のドラマ。4話はそれぞれ成長した4人の顛末が描かれ、最終話はエミリの母によって締めくくられる。

彼女達に”呪い”の言葉を投げかけるエミリの母を小泉今日子が怪演。4人の女性の前に現れ、彼女達の悲劇を見届けていく様は死神のよう。これ目撃した女子を26名にすれば2クールのドラマに出来たんじゃねえのかと(笑)。4人の女性を演じるのは蒼井優、小池栄子、安藤サクラ、池脇千鶴。


一番面白かったのは2話の小池栄子。犯人を思い出せない罪悪感から異常なまでに自分に厳しくなり他者のと関わりが下手になった教師を熱演している。話し方だけで、この人と会話するのきつそう感を漂わせるのは流石。女優のとして小池栄子を知らない方は「接吻」「八日目の蝉」「贖罪」を観るのを勧める。どれも全く似てないキャラを演じており素晴らしい。映画デビュー作「下妻物語」の桜島クラスの大根が嘘のようだ。


一番凄かったキャラが3話の安藤サクラ。引きこもり気味で母からの(言葉による)虐待で過剰に自信を失った女性を怪演。つーか安藤サクラは怪演しかしたことがないのではないか。「愛のむきだし」のブスエロい感じなんか最高ですよ。


最終話は小泉今日子がエミリ殺しの容疑者と対面する。最終話でこの話が何故”贖罪”なのか分かる。彼女が女子4人に投げかけた”呪い”の言葉は彼女自身がまいた種であり、しかも彼女はその罪を償うことができないという罪を背負わされる。霧に覆われどこにも行けない小泉今日子のラストカットは分かりやすすぎる程象徴的。

憎しみの連鎖をテーマにしているという点で湊かなえのデビュー作「告白」を更に進めた話だと思う。「贖罪」は原作未読でいうのも何だけど。「告白」は娘の復讐のため主人公自身が犯人と同じ怪物になってしまうという話だった。しかし、作者の意図を掴めなかった人が多く「ラストは痛快な復讐劇です」なんてレビューが出る始末(アマゾン、Yahooレビューをみよ)。「告白」は映画でもそういう描写してるのになあ。「贖罪」は「告白」以上にくどく憎しみの連鎖と言葉による呪いについて描かれている。黒沢清も意図的に分かりやすく演出してるような気がする。

誰が観ても楽しめる作品だと思う。これをWOWOWでリアルタイムで観ていた人は幸せだ。DVDで観るのもいいけど、リアルタイムで観たかったなあ。
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