爆裂BOX

ルチオ・フルチのザ・サイキックの爆裂BOXのレビュー・感想・評価

4.2
富豪の妻となったヴァージニアは、遠方の出来事や過去や未来を透視する能力を持っていた。幸せな結婚生活を送っていた彼女だったが、屋敷の中で老婦人が殺される白日夢を見てしまい…というストーリー。
ルチオ・フルチ監督による「幻想殺人」と同じく初期に撮ったジャーロ映画です。
改装の為夫の別荘に向ったヴァージニアは、そこの内装が白日夢と同じことに気づき壁をはがすと中から白骨死体が。それが失踪した夫の元カノだったことから夫は逮捕されるも、無実を信じるヴァージニアは透視した映像を基に事件を捜査するという内容です。
冒頭の少女時代の主人公が透視する母親の飛び降りシーンで、崖から飛び降りた母親が落ちながら崖に顔面を何度もぶちつけるシーンはフルチらしさ感じますが、以後はエログロ描写などはないですね。
見つかった白骨死体は若い女性のもので、透視したビジョンで見た老婦人は生きており、夫の無実を晴らすため主人公が奔走する前半はミステリーの趣が強いですね。主人公が透視からヒントを得て謎を探る大筋の展開は「サイコメトラーEIJI]ちょっと彷彿しました。主人公の見るオルゴールのような音楽が流れる中、割れた鏡や横倒しになった胸像、血塗れの老婦人の死体といったヴィジョンは「サスペリアPART2」彷彿させますね。実際影響はあるでしょう。
主演のジェニファー・オニールの美貌と線の細く頼りない雰囲気が作品にあっていましたね。来る鰓みたいな迫力ある義姉や、超心理学者の友人ルカの若い秘書で結構名推理連発するブルーナなど出番少ないけど脇役の女性キャラも魅力的でした。
主人公も観客も過去の映像と思っていたものが実は未来の余地映像と分ってからの後半は、自分が見た予知夢と同じ場所に出くわしていく展開がサスペンスフルに描かれていて楽しめました。終盤明らかになる犯人は意外性がないというか、怪しい奴がそのまま犯人だったパターンですが、主人公が非力なだけに逃れようもなく最悪の未来に向って行く所が緊張感ありました。
殴られた主人公が壁に塗り込められ、犯人が何とかやり過ごそうとする所はエドガー・アラン・ポーの「黒猫」そのまんまですが、意識朦朧状態の主人公の視界が徐々にレンガで埋め立てられ光が消えていく所は中々怖かったですね。それと交互に描かれる白バイに追われながら別荘に向うルカのシーンもハラハラ感を煽ってくれます。
そして最後の最後に鳴り響くオルゴールのアラームが鳴る腕時計には薄々予想しながらもゾクリときました。その後を描かず観客の想像に委ねる潔いラストもお見事です。
スプラッターのないフルチですが、緻密な伏線や巧みで効果的に使われる小道具などミステリー・サスペンスの秀作でした。フルチのスプラッターじゃない一面も素晴らしいですね。