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高地戦のmaverickのレビュー・感想・評価

高地戦(2011年製作の映画)
4.3
2011年公開の映画だが、今観てもスケールの大きさと迫力に圧倒される。戦場のリアルな描写はハリウッドが作る映画と全く遜色ない。驚きだった。朝鮮戦争の激しく悲惨な戦いを後世に伝えるには十分な作品性。戦場の残酷さ、戦争の虚しさはもちろん、北と南に別れて同族同士で殺しあったという悲しい出来事が本作でも非常に大きい。想像してみてほしい、例えば日本が上は北海道から南は沖縄まで、同じ日本人が半分に別れて戦争を始めてしまったら。中には元々九州に住んでいたのに、引っ越して東北にいるような人もいるわけだ。家族や昔の知り合いと北と南で別れてしまったり。そんな悲しい出来事が朝鮮戦争では実際にある。休戦協定が結ばれた後の今でも残っているのだ。戦場で憎しみあい、互いに殺しあう相手は同じ民族。こんな悲しい話があるだろうか。本作のドラマはそのような悲しい話のオンパレードで、とてつもなく辛い。やるせなくて悲しくて涙が止まらないのと同時に、沸き起こるのは怒りである。命令は絶対で、相手への恨みや憎しみがなくとも戦場で殺しあいを強制させられる兵士達。要所を奪還せよ、死守せよの一点張りで、命を軽視した作戦を繰り返す無能な上層部。愛する人がいて未来がある者達が、いとも簡単に見るも無惨に命奪われてゆく。停戦協定が模索され、本作の舞台となっている戦いが最終的に終結となり完全に停戦となるまでの2年間で、述べ50万人の犠牲者が出たとされている。ただ数字だけ見るのと、本作のような真実を基に作られた話を通して観るのとでは感じるものが圧倒的に違うと思う。リアルな戦場の描写、役者の魂のこもった表現で、死角は一切ない。物語としては、前半こそやや入り込みにくいイマイチさがあるものの、高地戦が始まると一気に世界観に引き込まれる。トラブルメーカー揃いの曲者部隊の連中が、何とも愛しい集まりに見えてくる。対峙する敵もまた同じ人間。このような場所でなければ心を通わせられる同じ人間なんだ。戦争とはそういうものだとはっきり感じさせる作品だった。ネタバレ厳禁な内容であり、その衝撃はぜひ実際に観て感じてもらいたい。
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