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演劇1のmorimotoseiichiのレビュー・感想・評価

演劇1(2012年製作の映画)
3.5
2017年5月3日(水)に鑑賞。想像していたのとずいぶん違っていた。平田オリザの働き方や演出についての考え方が垣間見えてなかなかよかった。想田和弘監督の観察映画と呼ぶにふさわしい作品だと思う。

このあと続けて観た『ピーター・ブルックの世界一受けたいお稽古』の中のブルックの演出と平田の演出が対照的だったのも、ふり返って反芻してみると興味深かった。

ものすごく単純化して言うならば、平田の演出は、彼が現代口語演劇を切り開いたと評価されるように、台詞のリアリティーを追求し、訳者が台詞をどのように発話するのか、またその間合いはどうかといったことを重視しているように見える。これに対してブルックの演出は、身体性に着目し、つま先、指の先まで神経を張り巡らせ、身体表現を昇華させた先にある「クオリティー」(と作品の中では表現されていたように思う)ものを引き出そうとしているように見える。平田が制作者側のイメージを観客に共有することを重視するのに対して、ブルックは共有されるイメージの主導権を観客の側に預けるような演出をしているように見えた。