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SHAME シェイムのJTのレビュー・感想・評価

SHAME シェイム(2011年製作の映画)
5.0
愛は知らない、知っているのは傷と恥
傷は根の深さを、恥は愛との距離を刻む
ただ求めているのはここではないどこか

『それでも夜は明ける』のスティーヴ・マックィーン監督による第二作目で、マイケル・ファスベンダーはその前の『ハンガー』でも主演を務めており、この二人のコンビは二度目でどちらも強烈に印象的な作品。この監督は、目を背けたくなる悲痛な瞬間と、息をのむほど美しい瞬間を妥協なく切り取り、万人ウケしない題材でも独特な魅力を引き出して心をかき乱す。

今作はセックス依存症と恋愛依存症の兄妹の話で、二人のバックグラウンドは全く語られずに話は進む。全ては語らないそのやり口が見事なもので、些細な演出や映像の撮り方でヒントを示し、その結果としてすごく自然でありながら映画的で絶妙にリアル。キャラクターにも映像にも奥行きを与えて目を奪い、直接的表現を避けながら人の痛みや恥を着日に伝える。

傷跡は、誰にも埋められない、何をしても埋まらない。過去は、忘れさせてくれない、何からも逃げられない。愛することは、恐怖になり、狂気になり、恥となる。人生が落ちて、欲望に堕ちて、虚無へと陥ちてゆく。自分は悪い人間じゃない、ただ悪い場所にいただけ。悪い人間と悪い場所から抜け出すために生きてきた。悪い場所から出てきた傷だらけのこの心は無知で臆病。何も知らないから、何も求めれず、何も手にできない。愛を知らないから、誰も愛せず、誰にも愛させない。誰かが愛してくれても、背負っているものが重すぎて、掴めない、壊されたい、でも死ねないから立ち尽くす。多くは望まない、恥を背負っていくから、良い場所を、冷たい灰色のニューヨークで色のついた愛を教えて。

オープニングとエンディングのあのシークエンスがすべて。

2020 . 07 - 『 Shame 』
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