チェさん

バッファロー’66のチェさんのレビュー・感想・評価

バッファロー’66(1998年製作の映画)
4.0
「ハート型は誰が考えたんだ?
 - 知らないねえ。
  ロマンチックな誰かさんだろうよ」

名作とは聞いていたけど、これはすげえ。
ポスターから勝手にサスペンス感のあるシリアスな映画かと思ってたけど、めっちゃラブストーリーじゃないか。愛が全てを救う映画。
僕も、初めてハート型を考案したロマンチックな誰かさんのような気持ちでいたいと思った。

映像表現がとにかくスタイリッシュで、ハイブランドのリール動画みたい。平面ってこんなに自由に使えるんだっていう衝撃。
タイトルの文字色と背景色だけでスタイリッシュに見せる冒頭とか、誘拐した直後の車での会話を外から四方で撮るのとか、家族との会話での3Sとか、回想の入り方とか。これが1990年代に公開されてるんだから、すげえ。今見ても新しい感じがする。

内容は、シリアスとコミカルが意味わからん天才的なバランスでブレンドされてて、鳥肌。
最初は主人公が救いようのないクズにしか思えないのに、物語が進むごとに"男性性"に囚われていただけで、実は繊細な僕ちゃんだったことがわかり、なんだか愛すべき存在になる。
アメフト狂のママに、継父?と思うくらいにビリーに興味のない父。愛犬・ビンゴを失った時から、ビリーに必要だったのは"男性性"じゃなくて、シンプルな愛だったんだねえと思うと切なくて泣いた。でも、いくらアメフトが象徴的でヘイトが向かいやすいとはいえ、キックを外しただけでスコットを殺しに行くのはヤバすぎる。アメリカってこんな奴ばっかなの?
ヒロインのレイラもとてもいい。こんなにも自分を語らないヒロインって、あんま見たことない。正直、どうしてビリーをこんなにも愛してあげられるのか意味不明だけど、愛になんで?を求めちゃいけませんよね。ほんとここ最近の1番の反省です。なんで?じゃないから神秘的なことってたくさんありますよね。そういうことですよね、ヴィンセント・ギャロ監督?
レイラのファーストカットがすごく悲しげに見えたのとか、たぶん何か語られてない背景があるんだろうなと思うし、語らないからこそ無償の愛って感じもする。この愛に理由があったら、たぶんビリーは救われてないしな。そういう意味でも、神話的な愛の物語って感じの映画だな。好きです、そういうの。

あーあ、それにしても愛がこんなにも全てを解決するならば、世の中の人はもっと愛されてもいいよな。世界平和だよ。
神様、この世の中、愛も金も偏在しすぎじゃありませんか?
チェさん

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