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故郷のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

故郷(1972年製作の映画)
3.8
仕事を求め故郷を離れざるを得なくなった家族の話。出演者がほとんど山田洋次監督の寅さんファミリーなので、柴又から瀬戸内の倉橋島に場所を移しただけのほっこりした話だと思っていたけれど、家族や近所の人との会話は深刻でした。

がれき運搬船を妻(倍賞千恵子)と二人で運航している船長の夫(井川比左志)。業界構造が大資本によって変わり、寿命のきた船を手放さなければならなくなる。工場の労働者となる決断をするまでを、静かな瀬戸内の海と島の人びとの人情を絡めて丁寧に描いています。

「時代の波や大きなものには勝てないというが、大きなものって何なんだ?」

と夫は努力が実らないことへの不安と怒りと悲しみが募ってきます。

木製の運搬船で大きな石やがれきを運び、船体を傾け、ヒールを作って岩を海に捨てる。信じがたい危険な作業でした。

1972年、ささやかな暮らしを脅かす<大きなもの>。今の時代も同じ。


海と船が好きで、瀬戸内海をいつか第二の故郷にしたくて観ました。島々の風景、入江の隅々、穏やかな海の映像が沁みました。
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