pika

湖のランスロのpikaのレビュー・感想・評価

湖のランスロ(1974年製作の映画)
4.5
んおー!血生臭すぎるオープニングから最高。この衝撃は何度見ようとも繰り返されるだろう。
ブレッソンによるスペクタクル浪漫の到達点。映像と台詞で理解するのではなく知覚した情報を元に脳で完成させる。イメージや象徴の羅列で語る難解な映画を多様に解釈するのとは違う。ある意味ドキュメンタリーに近い。中心となる肝心な画は映さず、結果の断片のみで全体をイメージさせるよう誘導する。この映画は哲学や心理ドラマではなく娯楽活劇でそれを完遂させてしまったとんでもない映画。

カチャカチャした甲冑のこすれる音と馬の蹄の音の心地よさが異常。馬の目、足のクローズアップ。城の全体像は見せず石畳や門が見えるだけ。
見上げた先にある窓、馬の駆ける音、最小限の演出で濃厚なドラマを見せきっている。
決闘のシークエンスの省略の処理が素晴らしい。繰り返しと変化、それに対する反応、一言『ランスロ』と言うだけで劇的な展開を表現する。
強制的に注視させられ、音と画とそのモンタージュからストーリーを構築し、人物の心理を考察していく。

『愛している』『もう一度』『愛している』『信じるわ』たったこれだけで成立させてしまうロマンス。
無表情でボーッと立っているだけなのに彼の頭の中にはあんなことやこんなことが駆け巡っているんだ、などとこちらであれこれと想像してしまう。画面に映るものからあらゆるものを勝手に読み取り解釈しドラマを完成させる。ボーッと見ていても勝手に能動させられる。観客の思考をも演出に組み込んでしまった凄まじきシネマトグラフ。完璧に作り込まれ徹底的に説明される映画とは一線を画す喜びを味わえる。
マーチ的な音楽が良い。ポイントを絞って繰り返される。
馬が戦いの跡を駆けていくエンディングも凄まじい。

2016/10/22【1回目】
pika

pika