よつゆ

緋色の街/スカーレット・ストリートのよつゆのレビュー・感想・評価

4.8
フリッツ・ラングによる紛う方なき傑作。
この監督の作品は観てないとな〜の筆頭とも言えるフリッツ・ラング作品。
フリッツ・ラング作品は『メトロポリス』が有名だが、如何せん観られないので本作で初鑑賞。

はじめは、ただ少し腹の立つ詐欺と恋愛の話が展開される。
趣味で絵を描くだけが生きがいのしょぼくれたおじさん。
未亡人であった女性と結婚するもぞんざいに扱われ続け、自分ではとても耐えられた生活ではない。
そんな中で出会った若く美しい女性キティはまさしく暗闇同然の日々に灯った儚い癒やしの光だったと思う。
にも関わらず…。

私はこうした恋愛劇は大して好きではない。
それもこの話は、前半は決して報われることはない恋情であるから余計に。
ただ、後半が更にその絶望に追い打ちをかける。
恋愛で報われることがないことを観客は知っている。しかし主人公は気付かない。
そうして物語が進行していく中で、主人公の唯一の生きがいであった筈の"絵"すらも主人公の制御が効かなくなり、次第に悲劇は連鎖し、取り返しのつかないところまで加速してゆく。

物語だけでなく、それを映す画面のすべてが儚く描かれる。
まさしく傑作。
よつゆ

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