こなつ

縞模様のパジャマの少年のこなつのレビュー・感想・評価

縞模様のパジャマの少年(2008年製作の映画)
3.6
原作は、アイルランドの作家ジョン・ボインによる同名小説。世界的ベストセラーになったその小説の映像化は、イギリスとアメリカの合作であり、監督マーク・ハーマンによって、ホロコーストを全く新しい視点で描いた衝撃作。

「衝撃のラスト10分」ということ以外、何の情報も持っていなかった。アマプラの月替わりセールレンタル100円の作品の中に入っていて、タイトルが気になって鑑賞。確かに衝撃的なラストだった。

第2次世界大戦下のドイツベルリンの将校の父の昇進により、一家で田舎に引っ越してきた8歳の少年ブルーノ。彼は家の周辺を探検しているうちに、有利鉄線が張り巡らされた風変わりな場所に出る。その金網の向こうにいる縞模様のパジャマを着た同じ歳の少年シュムールに出会い、二人はお互いの素性もわからぬまま、友情を育んでいく。

ユダヤ人の迫害、ナチへの崇拝が蔓延した世の中だが、8歳のブルーノは未だにその真実に気付けない。柵の向こうはユダヤ人の強制収容所なのだが、両親はブルーノには農場だと説明し、近づくことを禁じるだけ。ブルーノにとっては、退屈な田舎生活の中で見付けた友達の存在故に、現実を直視などできず、その思いがやがて悲劇的な結末へと繋がっていく。

あまりにも救いようのない終わり方。この終わり方しか出来なかったのは何故か。戦争の怖さ、子供を巻き込む迫害の傷ましさ。人種差別の悲惨な現実。子供同士の儚い友情にフォーカスし、無邪気なブルーノの視点で描かれているだけにラストは辛かった。

ナチス将校として夫ラルフがしていることを知って、ショックを受け、取り乱し体調を崩したブルーノの母親エルサ。ブルーノの姉グレーテルまでもが家庭教師の影響でヒットラーを崇拝していく中、その母親だけが唯一人としての心を持ち、ブルーノの怪我を手当してくれたユダヤ人パヴェルに「ありがとう」と言うシーンには心から救われた。母親役のヴェラ・ファーミガの知的な美しさ、素晴らしい演技力にも感動。

強制収容所など事実に基づく描写もあると思うが、実際にはユダヤ人が簡単に有利鉄線に近づけるわけはなく、見張りがいても不思議はない。ましてや子供が穴を掘って簡単に入っていけるわけなどないから、実際にはこんな悲劇は起こらないのだ。そうフィクションなんだと鑑賞後の居た堪れない思いを落ち着かせた。

ブルーノとシュムールの幼い友情が切なく、胸打たれるだけに、非道な戦争に翻弄された大人達の姿があまりにも残酷でありまた哀れで、強いメッセージ性を感じずにはいられない作品だった。
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