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ル・アーヴルの靴みがきのcoroのレビュー・感想・評価

ル・アーヴルの靴みがき(2011年製作の映画)
3.7
再視聴

フィルムノワールにでも出てきそうな、一見いかつく見える青い瞳をした靴磨き職人が主人公。
病を抱えた妻を気づかいながら、偶然助ける羽目になる、やけに礼儀正しい(笑)不法移民の少年をロンドンへと密行させるために奔走する姿を、哲学的とも神学的ともいえる台詞を交えながら淡々と描いている。
パウロ・コエーリョの夢を旅した少年が、歳を重ねて彼になったと言われも不思議じゃないほど人生を達観しているのに、どこか可愛く見える主人公が魅力的。

その澄んだ瞳と澄んだ心ですべてのことを平等に見つめる、彼の誠実で朴訥な人柄に触れていく内に、彼が周りの人たちからどんなに愛されているのかを知ることが出来る。
彼や彼を愛する隣人たちのとる行動を通して、見えてもいないのに勝手に善悪を決めつける、どこかズレてしまった社会の価値観を問う、おとぎ話のような物語。

言葉のいらない、互いを気づかうさり気ないやりとりや何気ない風景が醸し出す空気感が、カウリスマキらしくて心地いい。


入院中、来ると心がかき乱されるからと隠れて化粧をし、やがて訪れる夫を待つ妻も可愛い。
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