安堵霊タラコフスキー

最後の人の安堵霊タラコフスキーのネタバレレビュー・内容・結末

最後の人(1924年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

ふと思い出したムルナウの傑作の一つ。

昔ビデオで見たときに、映像は粗いものの表現主義を薄めてもなおシュトロハイム的写実主義で魅せるムルナウの手腕に脱帽したのだけど、一番感動したのはそのラスト。

というのも、心優しく生真面目なエミール・ヤニングスを襲う不運を描いて本編は実に暗く終わるのだけど、その後「このままだとあまりに暗いので幸福感あるラストを追加する」とラストにパーティーで主人公を祝福して締めており、ここに虚構の映画なのだから現実では起こり得ないハッピーエンドを人物に与えてもいいじゃないかという監督の良心が垣間見えて胸が熱くなり非常に胸が熱くなったし、ご都合的とはいえ幸運が齎された老人の姿には安堵感を覚えた。

似たような境遇の人物が陥る悲運を見て共感を覚えるファイブイージーピーセズやテルマ&ルイーズのような映画も素晴らしいが、現実では不可能な出来事を映画的魔術で可能にする有情な作品も悪くないものだと思えた貴重な体験だった。