TAK44マグナム

クライモリ デッド・エンドのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

3.8
逆襲のランボーもどき!


よくよく考えたら「クライモリ」ってすごい邦題ですよね。
確かに森の中で食人鬼に襲われる話なので「クライモリ」で合っているし、カタカナ表記にしたことで字面のインパクトもありますから、レンタル屋で手にとってもらえそうではあります。
でも、人によっては「なんだよ!蔵に潜むイモリの話じゃないのかよ!」とクレームがついたり、「フランシス・ハ」のように「クライモ・リ」だと思って勝手にホラーじゃないと思い込んでいるかもしれません。

・・・そんなわけないけど!

バカな話はさておき、個人的には一作目がそんなにハマらなかったシリーズの第二作となるのが本作。
前述したように、木々が生い茂る田舎にきたらそこは食人鬼が住む森でした!ってなお話はあいも変わらずも、少しツイストを効かせてきたので面白味が断然増した理想的な続編となっております。
王道を基礎としながら、そこからどう独自要素を加えて発展させてゆくか?
やはり、それが絞られたジャンルのシリーズものに課せられた命題だと言えるでしょう。



かつて製紙工場があった森を舞台に、自然の中をサバイバルするリアリティショー番組を撮影しにきた一行。
様々な理由から賞金欲しさに参加したボンクラな若者たち。
そして、番組を当てて一旗あげようと画策するボンクラなディレクターや撮影班。
サバイバルを仕切るのは元海兵隊の男。
しかし、そんな彼らを覗く目があった。
実は、この森には恐るべき食人鬼一家が住み着いていたのである。
マウンテンマンと呼ばれる食人鬼たちは、工場から流れる廃液混じりの水を飲んだせいで脳を侵され、著しく顔が奇形化、更には超人的な身体能力や耐久力を兼ね備えていた。
マウンテンマンたちは1人ずつ、確実に狩ってゆく。
その胃袋を満たすために・・・!



いきなり豪快な人体真っ二つから始まり、もう掴みは満点!
同時にマウンテンマンの異常さ、そしてタフネスを印象づけるオープニングが素敵。
その後も、ナイフで滅多刺し、腸がデロデロデロン、オノが頭にブッ刺さり、森に仕掛けられたトラップで捕まっては、みーんなマウンテンマンたちのお食事にされてしまいます!
ボンクラたちはマウンテンマンの胃袋を満たすために今まで生きてきたのです!
諸行無常!
恐ろしいですねえ!
だからスマホの電波がはいらないような田舎に行っちゃダメって、これほどホラー映画が警鐘を鳴らしているのに!
まだ行くか!
勝手にしろ!
プンプン!

それにしてもマウンテンマンのお母さんが作る料理がやたらと不味そう!
無理やり食べさせられる食卓のシーンもお約束ですな!
人生最悪のお・も・て・な・し!
なにせさっきまで普通に話していたヤツが生首ゴロンで調理されちゃっていますからね。どんなにメンタルが強い悪食でも、これを食べるのは無理ゲーでしょうよ(汗)!

そんな料理を美味しそうに食べるマウンテンマン一家の、たんなる殺人モンスターではない、家族想いで人間臭い一面を描いているのが本作の特徴でありまして、他人は平気で狩るくせして家族が返り討ちにあうと激昂する、つまりは「愛情」が垣間見えるわけですね。非常に自分勝手な家族愛ではありますが、やはり元々は人間なのです。
しかし話し合いとかはまったく通じません(汗)
藤谷美和子が歌う「愛が生まれた日」は今でもカラオケの定番デュエット曲ですが、あくまでもマウンテンマン同士でないと愛は生まれないのでした!
ただし、わきあがる性欲は生まれますよ!
「バトルロワイアル」のTシャツを着たディレクターとお色気要員女子のエロい営みを覗き見していたマウンテンマンは、たまらず自分のイチモツをしごこうとします(苦笑)
だがしかし!そこへ現れた奥さんマウンテンウーマンが「あんた!ワタシというものがいながら何しようとしてくれてんのよ!」と烈火のごとく怒りだし、「やるならワタシとやんなさいよ!殺すわよ?」と、まずは憎きお色気要員女子をあの世へと送り、その後マウンテンマン夫妻は仲直りのセックスを敢行!
激しいバックからの突上げにたまらず奥さんマウンテンウーマンも乱れた声をあげてしまうのでした・・・って、何を盛って書いているんだと思われたそこの貴方、これはこの映画を観るともれなく目撃することになるシーンであり、マウンテンマンにも立派な愛情や嫉妬心がある!という事を描いた大事なシークエンスなのです!
正常な人間相手にも、彼らは性欲や嫉妬心が生まれるんですな。
もちろん、一番は食欲ですが!
もう一度言いますが、ファミリーの結束がかたいマウンテンマンたちはファミリー間でしか愛が生まれません。
どういうことかというと、彼らは全員、近親相姦の末に生まれた者たちなのです。
キリスト教からすると汚れた者たちに映るでしょうが、それ以前に食人鬼なわけで汚れているどころの騒ぎじゃないですけれどね(汗)!

そんな風にマウンテンマンは自分たちは何人もの罪なき人を食材にしておいて、いざ家族や仲間が反撃にあうとメチャ怒ります!
そりゃあもう怒りまくって、食材調達というより復讐心に駆られるのです。
たぶん、今までは圧倒的に人を狩っていられたのでしょうが、今回ばかりは相手が悪かった!
そう、番組スタッフにヘンリー・ロリンズがいたのです!
しかも元海兵隊の猛者という役柄で!
ヘンリー・ロリンズ?
どなた?
そう思われても仕方がないでしょう。
マグナム的にもすぐには分かりませんでしたし(汗)!
しかし、たくさんの映画に出演しているので実のところ、ヘンリー・ロリンズを何回も目にしていたはずなのです。
ただ、チョイ役も多いので認識できていなかったんですね。
指摘されないと分からない。
それじゃあ誰なんだよと思ったら、キアヌ・リーヴスがイルカに助けてもらう「JM」でドルフ・ラングレンに殺されていた人でしたよ!
でも、音楽活動、番組MC、出版会社の社長、そして俳優業と多岐に渡った仕事ぶりから、どうやらアメリカでは有名人なんですな!
そんなヘンリー・ロリンズが死の間際で「ランボー2」のスタローンのごとく覚醒!
弓矢やライフル、爆弾を使って、マウンテンマンを逆にハントしてゆくのです!
コマンドーのシュワちゃんみたいに顔にスミを塗ったヘンリー・ロリンズがランボーの様に爆弾弓矢を射る!
ホラー映画でコレをやるって、この節操のなさが最高じゃないですか!

このようにマウンテンマン側を人間臭く描いたことや、ファイナルガール以外が大っぴらに反撃をかます展開が新味となっていて、なるほど、シリーズで1番評価されているのも肯けます。
ゴア描写も最初から最後まで、しっかりと非道いのを見せてくれるので退屈することなく観られました。

そんな本作を撮った才気あふれる監督は、お下劣ホラーオムニバスの「チレラマ」でゾンビ同士をセックスさせていたジョー・リンチ。
この人、そんなネタばかりだな(苦笑)!
キャスト陣も「テキサス・チェーンソー」のエリカ・リーセンをはじめ、この手のホラー映画への出演経歴が多いメンバーが集まっているので怖がる演技が板についていて宜しいですね。
エリカ・リーセンの、狂う一歩手前の演技は中々なものでした。

怖いというより、ただただ気色悪い感じですけれど、「悪魔のいけにえ」や「サランドラ」のエピゴーネンとして良作だと思います。
残酷な田舎ホラーがお好きならオススメ!


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