このレビューはネタバレを含みます
東京の恵まれた家庭に育ったシンジ。
疎開先でガキ大将のタケシと出会う。
全然違う環境で育った二人だから、やっぱりいろいろと衝突がある。衝突といっても、大人の私たちから見れば彼らが何を思っているのか、何をしたいのか、よくわかるわけですが、経験や語彙の少ない彼ら少年たちはそれがわからず、なんと言っていいのかわからないような感情で、ただ溢れているだけなのです。
つまり
本当は初めから二人は仲がよかった。
タケシは学校で暴力を振るってはいたが、家は貧しくて、よく妹の世話をしていた。
だから、疎開が終わって、いよいよシンジが東京に戻るというとき。シンジがタケシに別れを言いに来た時も、タケシは妹の世話をしていて会えなかった。
それで駅で
みんなに見送られながら、
シンジが汽車に乗って。
車窓から
ふとを外みると、
向こうのほうからタケシが走ってきて。
互いに手をふって、一生懸命に名前を呼び合うのだけれど、そこで井上陽水の『少年時代』が流れる。
田舎の風景。
タケシは線路の上で
片手をまっすぐに挙げて、
汽車がトンネルに入って、
タケシの姿が見えなくなって、
そこで映画が終わるわけです。
言葉を知らない、この切なすぎる少年たちの別れに、井上陽水の『少年時代』がばっちりはまっていて、思い出すだけでも鳥肌が立ちます。
余談ですが、
この映画は、『そこのみにて光輝く』の呉美穂監督が、映画監督を目指すきっかけにもなった映画とのことです。何かのインタビューでそう答えてました。
あと、映画全体としては、
不自然なほどにセピア色が強調されていて、それもまた雰囲気を醸成しているひとつなのかと思います。
必見。
製作:1990年
監督:篠田正浩