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フロム・イーブル 〜バチカンを震撼させた悪魔の神父〜のsomaddesignのレビュー・感想・評価

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第88回アカデミー賞作品賞「スポットライト」の予習用。
ちなみに今作も2006年の長編ドキュメンタリー部門でノミネートされてました。(ちなみに受賞したのは「不都合な真実」)


「スポットライト」の舞台である2002年のボストンでの新聞報道をきっかけに、全米各地でカソリック司祭・神父の子供への性的虐待、教会の隠蔽が次々と明らかになるなかで、性的虐待に関与した神父と被害者たちが生身でインタビューに答えることで、大変話題になった衝撃作。



オリバー・オグレディ神父はアイルランド系のカソリック神父。
彼の小児性愛による問題が初めて表沙汰になったのは1976年。
教区を司る司教は、警察沙汰にしない代わりに被害者にオグレディ神父を修道院に入れると約束。しかし実際は違う教区の教会に移っただけで、またそこで同様の性的虐待を繰り返します。
また問題が発覚すれば、また違う教区へと移動を繰り返すうち、
男女問わず性的虐待を受けた被害者の数は増え続けてしまいます。
そんなオグレディ神父も1993年についに逮捕。事件を新聞で知った熱心なカソリック信者で、また長年オグレディ神父の友人だったジョウノ夫妻は彼の身を案じサポートを約束します。が、彼らの娘もまた、その昔5歳から12歳までオグレディにレイプされていたことを知るのです。

謎のスピード裁判の結果、14年の刑が宣告され7年服役したのち、アイルランドへ送還されたオグレディ神父。
オグレディ神父の生々しい小児性愛の性癖を語る口調がなんとも気持ち悪い。言い草も行動も、人格がどこかぶっ壊れてるとしか思えない人で、被害者に一方的に謝罪の手紙を送りつけては
「ぜひとも謝罪したいので訪ねてきてほしい。赦しを与える機会を作ってあげたいのです」みたいな内容で、被害者たちを余計に怒らせたりします。

被害者たちは子供頃に受けたトラウマが原因で、
大人になった今も異性とうまく歓迎が築けなかったり、
被害者の親にしてみれば子供をペド犯罪者に差し出す形になってしまった自分を責めたりしてて、
ぶつけようのない怒りと悲しみの姿が大変痛ましいです。

一方で、教会の隠蔽体質と神父の妻帯禁止の不思議。
前教皇(映画公開当時は現職)の関与まで切り込んでいくのもスゲエです。


「スポットライト」で暴かれて以降、全米各地で「私も実はイタズラされてました」って訴え出る人たちが続出。
オグレディ神父の被害者だけでも(訴え出た人だけで)508人。
賠償金だけで6億6000万ドル。
その後、ボストン以降の内部調査で2002年までの50年間に、アメリカ国内で神父に性的虐待を受けてた人の数が1万1000人、訴えられた神父が4400人にも上ることが明らかになります。
現在までにアメリカ国内でカソリック教会が払った賠償金額が15億ドルだそうで、金額もすごいが払えるのもスゴイと。

現在は、映画にも出てくるようないい神父さんが内部浄化のために戦って、教会や神学校での性的虐待がないようプログラムを入れたり、一度でも性的虐待の歴のある人は職務停止になるような改革案が進んでるような、そうでもないような?

あとオグレディ神父は映画公開後、アイルランドの下宿先が何者かに襲われ、現在は誰かに匿われたまま行方不明だとか。真相に近づけば近づくほど、何度見ても後味の悪い一作。

面白がるのが不謹慎に思えるので、星ナシで。
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