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PERFECT DAYSのsomaddesignのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
5.0
東京・渋谷でトイレの清掃員として働く平山。淡々とした同じ毎日を繰り返しているようにみえるが、彼にとって日々は常に新鮮な小さな喜びに満ちている。昔から聴き続けている音楽と、休日のたびに買う古本の文庫を読むことが楽しみであり、人生は風に揺れる木のようでもあった。そして木が好きな平山は、いつも小さなフィルムカメラを持ち歩き、自身を重ねるかのように木々の写真を撮っていた。そんなある日、思いがけない再会を果たしたことをきっかけに、彼の過去に少しずつ光が当たっていく。

東京・渋谷区内17カ所の公共トイレを、世界的な建築家やクリエイターが改修する「THE TOKYO TOILET プロジェクト」に賛同したベンダースが、東京、渋谷の街、そして同プロジェクトで改修された公共トイレを舞台に描いた。共演に新人・中野有紗のほか、田中泯、柄本時生、石川さゆり、三浦友和ら。カンヌ国際映画祭では男優賞とあわせ、キリスト教関連の団体から、人間の内面を豊かに描いた作品に贈られるエキュメニカル審査員賞も受賞した。

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東京の風景とルー・リードがこんなに合うなんて!

どんな企画書や脚本を書いたら、こんな映画が出来上がるのか。
ドキュメンタリーのような淡々とした日常の連続なのに、ドラマチックに美しい瞬間の積み重ね。幸福も災難も同列に繰り返され、充足も後悔も、晴れも雨も自然のこととして連なってく森羅万象・千変万化、未完成の美。
明確な説明が少ないので、どう受けと止めるか見た人次第。自分には、同じような毎日の繰り返しだが、同じ日が二度とない。ひとところに留まれない苦しみや、森羅万象の全てがうつろい、変化していく儚さを「平山」を軸とした群像劇として描いて見えた。


質素で執着を捨てたような暮らしは修行僧のようで、過去の何か出来事から自分自身を罰してる人物に思えるが、音楽や文学に溢れ、銭湯の一番風呂や馴染みの店での晩酌…とささやかな幸せに満ちている。

平山の背景をあれこれ妄想すると、ずっとトイレ掃除を生業にしていたとは考えにくい。きっと裕福な暮らしだったハズ。若い頃は文学や音楽・写真を愛し、社会人になってからは仕事に邁進して高給取り…もしかしたら起業して事業を取り仕切る多忙な毎日だったかも。姪のニコが17歳くらいとして、小学生くらいから交流が途絶えたとすれば10年以上前。ニコと近い年齢の子供や家族がいたかもしれない。忙しさの中で彼が何を得、何を失ったか……映画内では描かれない人生を妄想しつつ、あの印象的な百面相のラストシーンに想いを馳せる。

木漏れ日…
なんだか禅問答みたいな映画だったな。見て良かった。
結局こういうことでいいんじゃないか、と思わせてくれるラストだった。


余談)
なにげに豪華なカメオ出演がおもろかった。古本屋の女店主はアニメ版「みどりのマキバオー」の声優としてもお馴染み・犬山イヌコ。下北の中古レコード店主は俳優の松井大悟。「アズミ・ハルコは行方不明」「くれなずめ」「ちょっと思い出しただけ」の監督としても知られる才人。
中でも印象的だったのが写真店の店主。無口ながら平山とは長年の付き合いがあるのが窺える独特の佇まい。誰だろうと思って調べたら、東大名誉教授で翻訳家の柴田元幸さん! ラジオで声は聞いたことあったけど、ご尊顔を拝見したことなかったので、しこたま驚いた。どういった経緯で出演することになったのか気になるー!

3本目
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