ジェニファー

クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦のジェニファーのレビュー・感想・評価

4.2
言わずと知れた大傑作
映画としては歴代で一番好きまであるんだけど、なんとなく「映画クレヨンしんちゃん」という枠から大きく逸脱してる気がする。
「雲黒斎の野望」でも戦国時代にタイムスリップはしたものの、今作ではタイムスリップまでの描写がほぼなくいつのまにか戦国時代にいるという形をとっており、現代パートがほとんど無い。
今までは野原一家の活躍が映画の縦軸になっていたのが、今作の縦軸は春日家のお姫様である廉と侍の又兵衛の身分を超えたラブストーリー。
タブーを侵す話で映画自体もしんちゃん映画のタブーに触れるような内容だが、原作の臼井先生がOKしたことで実現したらしい。
又兵衛視点がメインだが、廉の想いも細かい描写を使ってセリフをほとんど使わずに描かれる。個人的に好きなのは車の後部座席から廉が、後ろからついてくる又兵衛を眺めているカット。だんだんと差が開いていくのが切ない。

このラブストーリー自体も非常によくできているが、映像全体の一つ一つが細かく描写されているのも素晴らしい。
個人的に好きなシーンは、しんのすけの後を追ってひろしとみさえが身支度をする所で、ひろしがT字カミソリと電動カミソリのどちらを持っていくか迷う描写。戦国時代なので電気は通ってないと思い至りT字カミソリを選ぶ。こういう特殊な状況に陥る話なので、こんななくてもいいカットがいちいち光る。
また、「雲黒斎」との接点として、戦国時代への旅へ再び誘うのがシロだったり、春日城の作りが二作ともよく似てるところが、おそらく直接の関係はないとしてもファンとしては嬉しい所だ。

合戦の描写も足軽が突撃して主役が八面六臂の大活躍をするだけでなく、礫をつかったり槍を使って組みあったりする描写もリアリティがあって良い。
籠城戦もあればこちらから出撃するシーンもあり、シチュエーションが多数用意されてるのも画がわりがあって飽きない。

合戦に勝利するまでも非常に楽しい映画だが、やはりその後のシーンがこの映画のトロ。
又兵衛が敵兵から撃たれるまでの一連のカット構成が非常に巧みで、合戦に勝った安心感、廉の嬉しさ、又兵衛としんのすけの交流が説明過多になることなく同時に描かれており素晴らしい。
朝焼けの中で描かれる又兵衛の最期はとても美しいシーンになっている。徐々に状況を理解し、目に涙を浮かべるしんのすけの画はこの映画を象徴するカットだ。

空に浮かぶ又兵衛の旗によく似た雲を、野原一家と廉が時代を超えて見つめるラストシーン。
野原一家と廉の俯瞰カットは又兵衛の雲からの視点。廉の最初のセリフ「おい、青空侍」で幕を閉じる。
こんなオシャレなラストシーンがしんちゃん映画で描かれたのは前代未聞。見終わった後に廉の声が余韻となって残る。やっぱ小林愛の演技はいい。
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