ゆず

THX-1138のゆずのレビュー・感想・評価

THX-1138(1971年製作の映画)
3.9
ジョージ・ルーカスといえば私なんかはスター・ウォーズしか思い浮かばないが、彼のデビュー作はエンタメ性のあまりない、監視社会からの逃亡を描いたディストピアSFというのが意外だ。
繰り返される意味の分からないカットやノイズ音、どこまでも白い空間など、「静かではあるが狂気に満ちている」感じがずっとあり、心がざわついて仕方がない映画。
物語自体も一本調子の逃亡劇なのだが、本気で逃げるまでがけっこう長く、これは70年代の映画のテンポなのか監督の狙いなのか分からないが、とにかく心がざわついてしまう。
あと随所に説明が欲しくなるのだが、言葉による説明が一切ないのもざわざわしてしまう。

ディストピアのお手本のような世界観。
薬でわざわざ感情を抑制する市民たち、よく分からないが超危険な作業に従事する労働者たち、テープに録音された神の声などなど。
一方で独自性あるディストピアを描くことにも成功している。
それは「効率至上主義社会」とでも言えるもので、逃亡者が逃げるリスクと、それを追うためのコストを天秤にかけるというのが新しいと思った。コストかかりすぎるならリスクもほっとこう、という実に合理的・社会的な価値観。
あと最後のインパクトあるエンディングが何度見ても力強くて見事だと思う。



1/2 THX 1138 DVD 字幕
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