継

ストレンジャー/謎のストレンジャーの継のレビュー・感想・評価

4.0
挙式を控える,裕福な判事の娘と大学教授の男.
このカップルを不意に訪ねて来たふたりの男が, 砂時計をひっくり返す様に止まっていた時を動かす…⏳

戦後,元ナチ党員だった事を隠して逃亡・潜伏する男と,
罠を仕掛けて正体を突き止め,男の仮面🎭を剥がさんとする者,
そして2人の狭間で愛情と疑惑の板挟みに苛(さいな)まれる女.

オーソン・ウェルズ監督・主演のサスペンススリラー。
終戦直後の1945年製作を象徴する様に,再び時を刻み始める教会の時計塔.
天使と悪魔の像が文字盤を回る仕掛けの大時計.
巨大なその歯車⚙️が,発砲を切っ掛けにゆっくりと動き出す…


まだ若く精悍なウェルズがナチス再興を目論む男を,
執拗にウェルズを追うナチハンターをエドワード・G・ロビンソンが共に迫力満点に演じ, 間にヒロイン,ロレッタ・ヤングが入る構図。
心理戦をじっくり見せる中盤から堰を切った様に急転直下する終盤の流れとか,
編集の傷痕が無いウェルズ作品なので シンプルにストーリーテリングの面白さが堪能出来る。

アイヒマンや前にレビューを書いたクラウス・バルビー等, 実際に逃亡に成功するも後に発見・拘束されたり, 逆にその経歴を売りに連合国側へ買われたりと, ナチ残党のエピソードには信じがたいくらいにスリリングなものが多いけれど,
落合信彦という作家が,南米に潜伏する元ナチスのビッグネームを追った話をイスラエル・ユダヤ視点じゃなくナチス側の「言い分」をベースに書いてて,案の定完全否定されてるwwんだけど,
オデッサ機関の実態やナチスとバチカンの蜜月関係(ナチ高官の亡命にローマカトリックが関与してた…云々)なんて話は信憑性があって,
何よりハードボイルドなその筆力は読み応えある臨場感に溢れてました。

本作はウェルズの正体がコチラに明らかな所から幕を開けるので,亡命〜潜伏までのスリルが得られなかった点は残念でしたが,
メモ紙に鉤十字「卍」を描いた後に,誤魔化すように線を加えて「田」の様な図形としたり, モノクロの光と影で心象風景を表現したり…, 何気ないシーンの差し込みが人物の心境を表すようでウェルズの面目躍如。

『オデッサファイル』にも登場する,実在した有名なナチハンター,サイモン・ヴィーゼンタールは禿鷲を思わす容貌からして威圧的でしたが,本作でウェルズを追うロビンソンは猟犬のようなしぶとさを思わせて,これはこれで説得力あるキャスティング。

止まっていた時を動かして起こる🕒 , 皮肉で劇的な顛末。
からくり時計の内部構造⚙️のように,普段は伺い知れぬ仮面の下の素顔🎭。
時計塔の梯子(はしご)をめぐる,登る↔登らせまいとする攻防が,
“隠す↔露わにせんとする” 本作のテーマそのものを映すようでした。

裁きを下すのは(悪魔ではなく)天使。
当時の観客へのものだったと思える“連合国の勝利!”の台詞が, 終戦直後の時勢を感じさせます。
継