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歴史の授業のIRIのレビュー・感想・評価

歴史の授業(1972年製作の映画)
3.7
この映画はまさしく「歴史の授業」なのだけど、僕らのイメージする通常の授業とは全く異なり(ミニマルダブのトリップ感をもった)体感型の授業であり、映画の体験としても素晴らしいものだった。

「歴史の授業」というタイトルも、実際に映画内で長々と話される講義も、どうしても観客に理解せねば!という気持ちを駆り立てさせるものだし、僕自身そのつもりで観ていた。でも、全然古代ローマ帝国の知識はないし、眠くなるしで、始まってすぐに内容の理解は諦めた…笑

では内容を理解できないと、全ては時間の無駄で面白さがわからないままなのか?というとそうではない!(と思いたい)

寝ぼけながらも覚えてるシーンは
・現代のローマの街中のドライブ
・古代ローマ人によるローマ帝国の講義
・現代と古代の2人による対話
の3点で、映画はこの3つのシーンをひたすら繰り返すことで構成されていた。もちろん特定の話や道をリピートするわけではなく、話も道も進んでいるのだがとにかく同じシーンの反復になっていて、徐々に時間の感覚が薄れていく。

しかし、この反復の中でふとした瞬間にズレが現れる。これこそがまさにダブ的で、時間の感覚が薄れたタイミングでより深くに潜り込むスイッチの役割を果たし、サイケデリックな感覚を呼び起こしていたように感じられた。

この反復とズレをもってミニマルダブ的に映画は展開していき、観客の時間の感覚を麻痺させつつ、現代と古代を行き来する…頭ではなく身体で感じさせる「歴史の授業」だったのかもしれない。面白かった。
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