とり

キング オブ ポルノのとりのレビュー・感想・評価

キング オブ ポルノ(2000年製作の映画)
4.5
前からチェックしてたエミリオ・エステベス&チャーリー・シーン兄弟の、ちょっと手に取るのがためらわれるタイトルの映画。けっこういつも貸し出し中で回転率良さげでした。たまたま旧作料金でポツーンと並んでるのを発見したので即レンタル。

タイトルもすごいけど主役2人のルックスも凄いです。兄弟揃ってカトちゃんのようなツルピカハゲマル状態。
まぁチャーリーファンの私は遠くからパッケージを一目見ただけで彼だとわかりましたがね(笑)たぶん一般の人はわからないでしょう、この見事なつるっぱげ&ヒゲヅラ。

本編ではこの兄弟ときどきサングラスをかけたりするのもあって、一瞬どちらか見分けがつかなくなるほどよく似ています。以前はこの兄弟全然似てないのにそれぞれ父親のマーチン・シーンにはよく似ている、と不思議に思ってたもんですが、やっぱり兄弟ですな~。

この映画残念ながら日本では未公開ビデオスルーなんですねー。アメリカでもどうやらテレビドラマ用として製作されたのか、画面サイズはビスタですらなく、当時のテレビ用サイズ。
兄のエミリオが監督と出演もこなしています。昔からこの人は俳優よりもどちらかというと製作側の方が合ってそうな印象でしたが、今回は実の弟を主演に据えて(多分自身も主演だけどメインは弟だと思われる)の製作なので、おそらく本来の実力以上のパワーを発揮していると思いました。

70年代頃?から伝説的ポルノ映画を製作したという実在のミッチェル兄弟を描いた伝記映画になりますが、そのような伝説的ポルノはおろか兄弟の名前すら聞いたこともなし。「グリーンドア」という作品が有名だそうですが日本での知名度はどのようなものでしょうか?

てことで、全く知らない兄弟のドラマなんですが、これが俳優であるエミリオ&チャーリーと重なってとてもリアルなんです。いつも冷静で有能な兄と才能はあるのに不器用で感情的な弟。あくまでも2人にスポットをあてているんですが、兄の弟に対する愛情が感じられる作り。
学生時代から始まったポルノ映画作りの情熱あふれる時代からさまざまな挫折を味わったり裁判沙汰になったり、波乱万丈の人生を送る兄弟ですが、どんどん堕落していく弟と救おうとする強い兄の対比がとても自然で引き込まれます。

決してスタイリッシュではないんですが、すっきりまとまっていて静かな情熱も感じます。おそらくエミリオのチャーリーへの愛情がそのまま表れているのではないでしょうか。この兄弟だからこそできた映画って感じがひしひしと伝わってきます。そしてチャーリーもそれに応えるかのような自然体の演技がとても魅力的です。これは私のファンの欲目というだけではないですよ、たぶん(笑)

音楽もふんだんに使われているんですが決してジャマな感じはせず、ある種熱病のような感覚も覚えさせてくれます。そしてエンドロール中は音楽は一切なくひたすら静かな雨音だけ。この対比がとてもとても静かな余韻。見終わった後しばらく動けないくらいでした。
この兄弟を知っている人なら結末は知っていたと思うんですが、知らなかった私はかなりドキドキしてしまいました。ここでは詳しく書きませんが、それまでの進行から打って変わったかのような暗く重苦しい空気とたたみかけるような持って行き方が物凄くいい。
ラスト少し前に更生をすすめる兄に対し発した弟の言葉が重い中にも希望が見えるような気がしました。実際にあんな言葉を言ったのかどうかはわかりませんが、この映画で伝えたかったテーマ、メッセージが集約されているような気がします。

ところで兄弟の両親も出てくるんですが、ついでに実の父マーチン・シーンも使えば良かったのにと思ったのは私だけじゃないはず。名優父のギャラはとんでもなく高いのでしょうか。
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