スピルバーグが描く復讐劇。といっても国家ぐるみの復讐なので、個人的な恨みを晴らすためではない。
そのため半分ノンフィクションなのだが、怒りに対しての感情移入はしなくて済む。どちらかというと、突然暗殺チームに入れられた戸惑いと孤立に共感できる。
暗殺チームのメンバーは実は素人ばかりで、試行錯誤しながら手際の悪い計画を遂行していくところにやや笑いがあって、応援したくなる。ただ、そんな計画でもリアルに人が死んでいくので、観ていて気分は明るくならない。
本当に正しいことをしているのか、主人公と共に苦悩をすることになるが、ラスト近くの兵士との会話で少しは救われる。けど、復讐が本当に正しかったのか?これに対する答えはない。
だから、見終わったあとに自分なりに反芻して考えることになる。それがこの映画の狙いなのだろう。
007になる前のダニエル・クレイグが相棒役として登場しているが、やや軽薄な演技をしているので、007の質実剛健な演技と比べると面白いと思う。
それと、情報屋マチュー・アマルリックの胡散臭さとファッションが素敵。