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ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャーのp99のレビュー・感想・評価

3.5
サリンジャー。大学時代憧れたなぁ。

『ライ麦畑でつかまえて』の主人公は、どこか浮世離れしていて、粗暴で、かつ超絶人間らしい人物だった。よく覚えてないけど、都会に出てきて自らのあり方を模索する田舎者って感じで、非常に愛らしい人物だった(気がする)。

さて、本作ではその著者のサリンジャーが主人公だ。淡々と描きながら、時折非常に力強い人物描写が印象的だった。

ニコラス・ホルト演じるサリンジャーは、出だしこそ出版することに取り憑かれた、小説家としての出世を求める俗物であったが、その後に自問自答し、小説家を超えた「人間」としての生活、静けさを求める人物として描かれていた。しかし、彼の葛藤や感情は深く激しく、周りを寄せ付けないようなオーラを放っていた。そういう微細な演技をする俳優としてホルト君を再認識できた。

脇を固めるのは、かのケヴィン・スペイシーであり、色々あったけど、やはり俳優としての彼は優れていた。役としては、小説家を育てる大学教授であり、大統領役を演じた彼の講義の演説は非常に説得力があり、導くものとしての威厳に満ちていた。

全体として、淡々と、しかしテンポよく話が進むので、題材の割にかなり観やすい映画として仕上がっている。力強い感情に触れたい時、孤独(逆説的に愛情)に触れたい時にうってつけの映画だ。
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