xo

シャドー・メーカーズのxoのレビュー・感想・評価

シャドー・メーカーズ(1989年製作の映画)
2.8
1989年のオッペンハイマー。ノーラン版を見るにあたっての有用な補助線にはなった。

史劇、伝記映画、群像劇調のヒューマンドラマといった要素が混在していて、物語としてはあまり引き締まっていない印象。
オッペンハイマーの内的な葛藤に焦点があたりだすと面白いし、引き込まれる。感情の揺れは確かに描かれている。個人の複雑な想いが組織の暴力的な論理に飲み込まれていく。

しかしながらクライマックス、原爆投下前後になるとそのあたりの複雑な感情が単色で塗りつぶされてしまっているように見える。
作劇的にも微妙な語り口をしていたのが、原爆投下後は、"自由" "解放"のような肯定的なニュアンスが前面に出て、結局はハッピーエンドっぽく締められてしまう。ややプロパガンダ映画っぽいというか、こうせざるを得ないんだろうなとは感じた。最後のテロップもアリバイのように映る。

そうなると、映画としての出来とは別に、今回のノーランがどういうニュアンスに着地させているのかが気になった。オッペンハイマーという人物をある種の"哀感"とともに同情的な視点で描いているのは間違いないんだろうけど、数十万人を犠牲にしたことを結果的に隠蔽してしまっていないか?というのは気になるところ。
xo

xo