「サザエさん」っぽいなって思った。目線が庶民にあって、能天気といっていいくらいの牧歌性に満ちた喜劇。貧乏で何もない暮らしでありながら、悲哀は一切なく、全編にわたってコメディ。
後半になるほどドタバタのスラップスティックの様相が強くなっていく。ドリフ的。
最後は、明るく前を向いていこう、なシーンで締められる。映画の目的、目指すところは非常にはっきりしている。
興味深いのは、この頃から「お役所仕事」なる概念があるってこと。役所の人間が紋切り型の長ったらしい説明をした挙げ句に老婆が「耳が遠いからもういっぺん」、目の前に食料がありながらも"命令"がないため配給ができないという言い分、歌に乗せて風刺される「会議のための会議」。
人々の抱く感覚というものは当時と今とで変わらない。本音と建前を使い分けつつ、時に強き者に媚を売ったり、狡猾に嘘をついたり。「他人を押しのけて自分さえ良ければそれでいい、それじゃあ世の中はいつまで経っても明るくならないよ」というセリフが印象的。