富と孤独というソフィア・コッポラらしい題材を扱いながら、彼女の諸作と比べると複雑さや繊細さを欠いている印象。
物語やメッセージは彼女史上もっとも明快。ただ話運びは上手くない。淡々と事象を並べていくだけでドラマ性に乏しいし感情的側面の掘り下げが弱く、退屈だった。
起承転結における”承”が長すぎる。プリシラとエルヴィスの逢瀬は繰り返されるばかりで物語の進行に寄与しないし、エルヴィスの浮気癖という不穏な要素を早い段階から見せてしまっているのももったいないところ。
とりわけエルヴィスが魅力のないクズにしか描かれていないのが問題だと思う。二人の関係性に説得力を感じない。愛というよりは執着や依存にしか見えないわけだけど、そのことが皮肉として描かれているかというと、そういう様子でもなく。。空疎な薄っぺらい恋にしか見えない。好きじゃないけど離れられない、金や権力への欲望を手放せない、みたいな話ならばわかるけど。。
エルヴィスという存在のスケール感、現実味の乏しさも気になる。限られた人数の出待ちファンは映ったりするものの、”現象”の様子がぜんぜん伝わってこない。直接映さなくても、美術や演出でいくらでも説得力をもたせられただろうに。
決まったメンバーでの飲み会を繰り返しているのにしたって、監獄的な、抑圧的な環境下にあるって演出になっていないし。。
乱痴気騒ぎと薬だけで、プリシラとの暮らしにおいて”滲み出てくるもの”がないんだよな。。描かれ方が雑というか。
