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エピデミック〜伝染病のrebのレビュー・感想・評価

エピデミック〜伝染病(1987年製作の映画)
4.3
監督(トリアー本人)と脚本家が5日間で「エピデミック〜伝染病」という脚本を作り上げるが、現実の世界にも感染が‥。
若きトリアー監督が映画を作っていく過程を見ることができるのはとても興味深い。
脚本作りの途中でドイツのケルンに住む友人のウド(ウド・キア本人)を訪ねるのだが、そこでウドは亡くなった母親から聞いた自分の出生の話をする。
ウドが生まれた日、病院に英軍の空襲があり生き残った母は、煉瓦の壁に素手で穴をあけウドを抱いて助けを待ったという。
実際ウドは1944年10月14日ケルン生まれでインタビューなどでもこの話をしている。
街は炎に包まれ焼夷弾で焼け爛れた人々が池の中で泣き叫んでいたという。
「母は最期の時に僕にその話をして死んだ」と泣くウド。「池の中で泣き叫んでいた人たちはナチではない。僕の母もナチではない」
ウドと会った後、脚本家は「伝染病」が理解できたよと言うが、エピデミックも戦争が引き起こした悲劇も、人為を超えた避けられないものという意味だろうか。
しかし明らかに戦争の始まりは人為的なものとしか思えず、悲しく憤りを覚える。
この映画の中で「靴の中の小石のような映画になるといいな」とトリアー監督は言っている。
忘れてる時もあるけど、その痛みと存在感をチクッと思いだす。私にとってのトリアー作品。好きです!
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