真田ピロシキ

宇宙人東京に現わるの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

宇宙人東京に現わる(1956年製作の映画)
3.4
女神転生シリーズのキュートなヒトデ型堕天使デカラビアの元ネタ パイラ人が登場するSF映画。テトラカーン。デザインは岡本太郎先生。パイラ人さんが地球人に醜悪な生物扱いされて「そんなに奴らは美しいのか?何だコイツらは。顔の中心に突起物があって醜いじゃないか」と言うように一面的な美的感覚に疑いを呈しているのは案外ルッキズムを否定し始めた今の時代に見るに相応しい。パイラ人を通じて多様性を知れる。しかしせっかく非ヒト型のパイラ人であるが、当時の映像技術ではただのヒトデの被り物をした人で思いっきり二足歩行なのが悲しい。今ならデカラビアみたく空中浮遊してグルグル回転したりできるのに。

さて、パイラ人さんの目的は原水爆戦力を増強して更にはそれ以上に危険な元素を発見した地球人に警鐘を与える事で、ちゃんと理を持って説得しようとしてる所がろくに地球人の調査もせず一方的に滅ぼそうとした邪悪そのものな『地球が静止する日』のクズ宇宙人とは違う。キアヌの方ね。同じ知的生命体として、そしてかつては自分達も危険なエネルギーに頼っていたという事でシンパシーを抱いているのが初めから超然とした上から目線を感じさせなくて好感の持てるところ。また日本に現れた理由はメタな事を言えば日本の映画だからだが、「核兵器所有国に言ってもなかなか認めたがらないが実際に被害を受けた日本なら理解できる。例え実効性がなくとも」と言っているのがこれまた今にも通じる反核メッセージを感じられて良い。

一番の目的は惑星衝突の警告で近づくに連れて生物が死んでいくなど影響を受ける地球の姿はなかなか真に迫った感じ。この時点でようやく核所有国も事態を理解して全ての核兵器をぶち込むも全く効かなくて、今の時代に生きてる人ならまあそうだろうなあと思うし、大体反核映画なのに核で解決できたら台無し。エアロスミスを流す余地などないのだ。解決策は危険な新元素。その威力は星を木っ端微塵にする。…っておい!そりゃあこんなモノ恐ろしくて封印するわなあ…核よりヤバいもので解決するのは如何な気が。