はる

ザ・バニシング-消失-のはるのレビュー・感想・評価

ザ・バニシング-消失-(1988年製作の映画)
4.5
とても変わった映画です。驚かしたり残酷な描写だったりで怖がらせるのではなく、観客の好奇心をそのまま恐怖に転換するサイコスリラーです。
オランダからフランスに小旅行に出かけたカップル。サービスエリアで彼女が飲み物を買いに行ったきり帰ってこない。果たして真相は?というミステリー仕立てになっているんですが、実のところ犯人自体はすぐにわかってしまうんですよ。でもこの犯人が一体何をしたのかは最後まで分からない。
本作の犯人はサイコパスのイメージとは程遠いとにかく普通な男なんですよ。普通に奥さんと2人の娘がいて、仕事もこなし、狂ったような雰囲気は全然ありません。そんな男がとある日、犯行を決意し、着々と一人で練習を始めます。自らでクロロホルムを嗅いで何分気絶しているかを計ったり、車にどうやったら上手く被害者を誘導できるか考えたり。ちょこちょこ失敗しながらこんな練習を何度も繰り返すんですよ。彼女をあの手この手で探す彼氏のシーンにこの犯人の練習シーンが合間合間に挟み込まれる構成になっていて、観ている方としては「もしかしてこうなんじゃ?」と勝手に考えを巡らせてどんどん恐怖が膨らんで来るんですよ。あえて見せない事で恐怖を煽る映画もありますけど、この映画はそれともちょっと違うんですよね。この彼氏の好奇心が観ている自分にも乗り移ることで味わった事のない恐怖を感じるんです。あと、劇中とある暴力シーンがあるんですが、その時のやられている側の顔があまり凄まじくて、ちょっと調べてみると噂ではその暴力シーンは打ち合わせせず本気でお見舞いしたらしく、もはや演技ではなく本気の苦痛の表情だそうです。ここマジで怖いです。
あまり他ではない映画体験になりました。いやぁ怖かった。
はる

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