マヒロ

サザン・コンフォート/ブラボー小隊 恐怖の脱出のマヒロのレビュー・感想・評価

4.0
湿地帯にて演習中のルイジアナ州兵の男たちが、ほんの出来心から近道をしようと現地に住むケイジャンの人々が使うボートを勝手に使ってしまい、その現場を目撃されてしまう。更に分が悪いことに隊の中のアホがふざけて威嚇射撃をしたことから、戦闘を仕掛けたと勘違いされ泥沼の脱出劇が始まる……というお話。

無骨映画の巨匠ウォルター・ヒル監督作品。
ケイジャンとはフランスからルイジアナ州にやってきた移民の人々のことで、独自の文化を持ちフランス語を話すため、アメリカ人の州兵たちはまともにコミニュケーションすらとれず、地の利のある向こう側に一方的に襲撃される羽目になる。ブアマン監督の『脱出』や、最近では『ローン・サバイバー』『トリプル・フロンティア』なんかもあった"他人の土地から脱出系"映画(今勝手に名付けました)。
州兵たちはルイジアナは自分たちのものだと思って横柄な態度を取っているが、その中でも他人の踏み入る余地のない暮らしを築き上げている人達もいて、そんな平穏を踏みにじった事によってヒドい目に遭うことになる。

隊の中でも辛うじてまともな神経をしているのは主人公格のキース・キャラダイン演じるハーディンとパワーズ・ブース演じるスペンサーくらいで、後は早々にぶっ殺される軍曹を継いで統率しようとするもカリスマ性の無さから好き勝手される上官、見えない襲撃の恐ろしさから気がふれてしまう奴、ケイジャンに対する敵意を剥き出しにして捕虜を痛めつける奴など、ろくでもない奴だらけ。プレデターの如く次から次へと罠を仕掛けて兵隊を仕留めていくケイジャンも恐ろしいが、襲われる州兵たちも完全に自業自得なのでどちらが白黒とは言いづらい不思議な感じ。

全く先の見通しが立たない異様な湿地帯での戦いも胃がキリキリするような恐ろしさがあるが、終盤で生き残った男たちが訪れるケイジャンの人々の集落の場面も凄くて、楽しげなケイジャンミュージックをバックに、幸せそうなダンスのシーンと家畜の解体のシーンを交互に見せ、そこに迷い込んでしまった州兵たちの不安と希望が入り混じった錯乱した気持ちを観ているこちら側も味わう羽目になる。

ジメジメとしたシチュエーションでおっさんたちがいがみ合い、更に周囲にはおそろしい襲撃者が……というひたすら厭な場面が続く華やかさは一切ない映画だけど、個人的に今までみたヒル監督作品の中では一番面白い作品だった。ジャンル分けがまた難しい映画だけど、なかでも田舎ホラーが好きな人には是非観て欲しい。
ライ・クーダーの気だるいギターサウンドもまた良し。

(2019.141)
マヒロ

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