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危機のpikaのレビュー・感想・評価

危機(1946年製作の映画)
3.5
ベルイマンの監督デビュー作。
ベルイマン監督作として見ると荒削りだし音楽が単調でイマイチな面はあるがモノクロ古典映画として見ると非常に面白い。

小さな田舎町に住む母娘の元に都会で成功した生みの実母がやってきて娘を返してくれと言うストーリーで、脚本が特に面白い。

育ての母、若い娘、実母、実母の愛人、田舎の青年と多様な人物がいてそれぞれの愛情や孤独感、嫉妬や絶望などひとつひとつを掘り下げればそれだけで一本ずつ映画を撮れるような奥行きがあり、そんな透けて見える奥行きを巧みに用いてドラマとして楽しませてしまう。
観客がどこに注目してもいいような全体を楽しんでもいいような、普遍的な人物像の成長や葛藤や人生の悟りなどを荒削りながらも端的でわかりやすく、余韻を残しながら人間味溢れる作品に仕上げる演出はさすが!
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