たく

ミュンヘンへの夜行列車のたくのレビュー・感想・評価

ミュンヘンへの夜行列車(1940年製作の映画)
3.7
レックス・ハリスン出演作にハズレ無しって感じで、第二次大戦下のナチスドイツ軍とイギリス人諜報員との攻防という一見重い題材をエンタメ要素で見せてくれてなかなか楽しめた。「第三の男」のキャロル・リード監督の初期作で、アカデミー監督賞を受賞した「オリバー!」は未見なんだけど、ミア・ファローの「フォロー・ミー」が遺作だと知って驚いた。レックス・ハリスンは顔はちっとも笑ってないのに可笑しさが滲み出て、改めてコメディの才能がすごいと思う(本作はコメディではないけど)。

軍にとって重大な武器開発をしてたチェコの科学者とその娘が技術盗用の目的でドイツ軍に囚われ、彼らを救出するために英国諜報員のランドールがドイツ将校に扮して移送列車にもぐり込む展開。序盤で科学者の娘に寄り添って信頼を得るマルセンが実は熱烈なナチス信者のドイツ兵だったという狡猾さを見せておいて、優秀な諜報員であるランドールとの騙し合いの妙をスリリングに引き立たせるのが上手い。

ランドールが、科学者の娘を口説き落とすことで彼女に父親のドイツ軍への協力を説得させるという口実で二人の連行に同行するのがいかにも荒唐無稽なんだけど、作品内ではなぜか説得力が生じて観てる方は自然にその作戦に入れ込んじゃう。ここでランドールを見知ってる英国人が登場し、悪気のない行動がランドールを窮地に追い込むのがヤキモキするんだけど、怪我の功名で結果オーライの方向に向かっていくのがエンタメ要素で楽しませてくれる。ランドールの口説き作戦が噓から出た実みたいな感じに終わる幕切れも良かった。
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