チッコーネ

下女のチッコーネのレビュー・感想・評価

下女(1960年製作の映画)
3.5
1960年のアジア映画とは思えないほど執拗かつ不穏な、サイコホラー。
終盤に主演男優が「すべて男の弱さが悪いのです」というような挨拶で体裁を整えているが、本編は全く正反対で、むしろミソジニーの香りすら漂う。

女性によるレイプが描かれた邦画には『皆殺しの霊歌』があるが、本作はそれよりも8年早いし、何より大衆向けの作品とは言い難いほど度が過ぎていた。公開時における本国での立ち位置はわからないが、舞台美術などを観るにつけ、監督は欧米のB級モンスター映画に影響を受け、本作を撮ったのではないかと想像してしまう。
とは言え私が知る限り、欧米で本作のような手加減の少ないサイコホラーが登場し始めたのは、やはり60年代の半ばぐらいだと思うのだが…、それともヒッチコックあたりの影響か…、韓国恐るべし。

ロケ場面はわずかにあり、メインキャラは外出もしているが、少数のセットを使い回しているため、密室感がいや増している。子供などのサブキャラも邪気に満ちていて、儒教精神はどこへ行ったの、という感じ。
また序盤では誰が『下女』の座に就くのか予想が付かない、という展開にも、意外性があった。