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マルティナの住む街のemilyのレビュー・感想・評価

マルティナの住む街(2011年製作の映画)
3.6
挙式直前に花嫁に逃げられたディエゴ。彼を元気づけようと従兄弟のフリアンとミゲルの3人はディエゴの初恋の相手に会いに、子供の頃夏休みを一緒に過ごした避暑地へ向かう。マルティナに再会するも彼女には息子がいた。失恋の痛手のなか再びマルティナに恋するディエゴだが・・・

今作の一番面白い部分は冒頭のディエゴと従兄弟3人の会話に集約されている。とにかく会話のリズムと切り替え、ユーモアのセンスがスペインならではな感じで非常に引き込まれる。何気なく配置された3人の位置が変わり、スピーチ的に一人が会話の筋を引っ張り、合間に教会の金がうまいタイミングでなるのだ。そのタイミング絶妙。ミゲルは片目を失い眼帯をしており、体に脈拍計をまとっている。脈拍が上がると、これが音を発するのだ。これがまた良いスパイスとなり、ドタバタ劇に良いリズムをもたらしている。

マルティナと出会ってからもマルティナと息子、ミゲルとディエゴの2組の膝枕姿を扉の向こうから見せたり、3人がそれぞれの人たちとかかわり、ドタバタの中にひっそりとヒューマンドラマを交えていく。しかし決してメロドラマに転ぶことなく、
ラストも軽快にユーモアを残しつつ、それぞれの成長物語も決して大げさになっていないところがよい。

何気に良いセリフが何個かあり、ミゲルとダニがトラウマを克服しようと前に進む姿に美しい花火があがり。しかりさらっと描かれて、常に陽気な音楽が寄り添う。下ネタも多いが、会話のユーモアと言葉のチョイスにはセンスがあり、3人の赤・緑・青のTシャツやへたくそ過ぎるダンスと歌の中に、ミゲルの意外性もあったりして、とにかく最後まで楽しめる。押しつけがましくないヒューマンドラマの交わりは逆に心に訴えるものがあり、見終わった後、ほんの少し前向きな気分にさせてくれる。特に冒頭の3人の会話劇は会話のセンスも配置も、すべてにおいてお気に入りである。
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