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イングロリアス・バスターズのbutasuのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

面白かった!長尺を感じさせないワクワク感の持続で夢中になって観てしまった。

ブラッド・ピットが魅力的なのは勿論だが、本作で一番輝いていたのは間違いなくクリストフ・ヴァルツ。彼が演じたハンス・ランダ大佐は架空の人物なのにWikipediaに専用ページまで作られているレベル。多国語を操り冷静で残忍でありながら、狡猾で小物感もある、絶妙に魅力的な悪役。延々と観ていられる。最高。

ただし実質の主人公はメラニー・ロランであり、こちらはやや退屈だったかな。ダイアン・クルーガーも結構出番が長く、全体的に華やかさを担保するための女性の登場シーンが多めで、でもそれらのシーンにはあまり魅力を感じられなかった。もっとバスターズの活躍っぷりをたくさん観たかったなぁ。

タランティーノと言えば唐突なバイオレンスとダラダラ会話でお馴染みだが、本作ではダラダラ会話がほとんどない。素性を偽っているパターンが多いため、全ての会話は意味ありげでスリリング。いつものしょうもない会話劇が好きだっただけにちょっと残念ではあったが、これはこれで普通の映画としては緊張感があってとても良かったと思う。

この手の第二次大戦を描いた作品にしては珍しく、ちゃんと言語を使い分け、そこに意味を持たせているのにもすごく好感をもった。ヒトラーが英語で話すようなクソ映画が多い中、本作のこの姿勢は素晴らしい。冒頭で言語を英語に切り替えたときには「あーまたこういう系か」と思ったが、"隠れているユダヤ人に悟られないためだった"という意味がしっかりあったときには嬉しくなったし、むしろこういう我々の思い込みを逆手に取ってきたことに感心した。

あとこの手のナチスを描いた映画なのに、ナチスの残虐性を全然強調していないのも凄い。よっぽどアメリカのバスターズの方が残虐でやりたい放題だからね。

クライマックスの火災、爆発シーンの迫力と爽快感は圧巻。CGを使用していないらしく、見ているだけで熱さを感じる素晴らしいシーン。ちゃんとああいったカタルシスを感じるシーンを入れてくれるところがタランティーノの安心感。ちゃんと(?)ヒトラーも死ぬよ!
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