sonozy

聖なるパン助に注意のsonozyのレビュー・感想・評価

聖なるパン助に注意(1970年製作の映画)
3.5
R.W.ファスビンダー監督の同年製作の『WHITY』の撮影時の混乱をセルフ・パロディとした作品とのこと。
スペインのホテルで、監督の到着・撮影開始を待つ十数人の俳優やスタッフのあれやこれや大混乱の群像劇。

冒頭は空をバックに立つヴェルナー・シュレーター (映画監督/演出家)が、漫画「Wee Willy」のキャラGoofyの物語を語る長めのモノローグ。

場面は、撮影開始を待つ俳優やクルーの面々が集まっている、スペインのホテルのロビーへ。
プロジェクトマネージャーのサシャ(ファスビンダー監督)やプロデューサーは到着が遅れてる監督ジェフ(ファスビンダー役 ルー・カステル)と電話するが、撮る気がないと言うし、資金もフィルムも足りないいしと、ダメダメな状況。

やっと到着した監督ジェフは、到着するなりロケーションやらスタッフやらにブチ切れ喚く。
ヒステリックで暴力的な監督と混乱の中、映画(『Patria O Muerte(祖国あるいは死)』)は完成できるのか・・・

ハンナ・シグラは女優ハンナ役としてマリリン・モンロー風のセクシーな白いドレスで魅惑発揮。
探偵レミー・コーションものや、ゴダールの『アルファヴィル』のエディ・コンスタンティーヌが男優役で渋い存在感。
制作秘書バブス(マルガレーテ・フォン・トロッタ)はサシャの妻?でジェフとも寝てるし、サシャに虐められてるコンビニアン(ウーリー・ロメル)、ジェフから婚約破棄&暴力受けるイルム(マグダレーナ・モンテツマ)、ジェフのゲイ愛人 男優リッキー(マルクヴァルト・ボーム)...etc
登場人物多数&役どころが分かりにくい&人間関係もぐちゃぐちゃ…で全面的に混乱状態(笑)

ラストに引用されているのは、トーマス・マンの小説『トニオ・クレーガー』で、トニオが語る言葉。
「人間的なものと関わりを持たないくせに、人間的なものを表現するっていう仕事に、死ぬほどうんざりすることもしょっちゅうなんだ」(書籍より)

相当気に入ったのか、ほぼカクテル「キューバ・リブレ」しか飲んでないのも面白い。

妙な邦題の「パン助」は死語ですが、娼婦のことですね。ほぼ原題通り(≒聖なる娼婦の警告)かと思いますが、その意味は分かりません。

ファスビンダーが立ち上げた劇団「アンチ・テアター」のメンバーによる最後の作品のようですが、こんな状況で製作されたのだとしたら『WHITY』も気になります。
sonozy

sonozy