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聖なるパン助に注意のbennoのレビュー・感想・評価

聖なるパン助に注意(1970年製作の映画)
4.3
ファスビンダー監督作品…11作品目…ルー・カステル出演が魅力的…。

そしてハンナ・シグラも観たくなりました…ෆ*

まずタイトルの《パン助》って…?? 原題は『Warnung Vor Einer Heiligen Nutte 』 (聖なる娼婦に警告)…つまり「娼婦・男娼」の意…今作では《パン助》なので《男娼》限定かなっ?? …それにしても邦題のセンスがちょっと残念…ს


今作はファスビンダーが劇作家時代…彼の映画作りのコミューン《アンチテアター》による実質的最後の映画撮影の裏側を描いたメタ作品…。



スペインのリゾート地にある海沿いのホテル…。

映画の撮影隊や俳優陣がクランクインの瞬間を待ち構えている中…肝心の監督ジェフ(ルー・カステル)は一向に現れる気配がありません…。

制作主任のサシャ(ファスビンダー)が取り仕切るものの、徐々に苛立ちを見せ始める役者やスタッフ…。

そして漸く監督が到着するものの思うように撮影は進みません…。



様々な人種、仕事での上下関係や利害関係に置かれた人々…プライベートでは男女入り乱れての愛憎の醜悪さ…バイセクシャルであるファスビンダーの真骨頂です…。

今作の監督ジェフは明らかにファスビンダー自身を投影…彼の生き急ぐような旺盛な創作意欲は徐々に独裁的に…ちょっと苦手なハイトーンヴォイス…ヒステリックな暴言を吐き続ける監督像はまさにセルフ・パロディ…。

監督に群がる人々に罵声を浴びせながらも…疲弊してゆく姿は彼の生き様そのもの…ルーがどんどんファスビンダーに見えていくのがお見事!!

舞台となるホテルのロビーの壁画や柱…騙し絵のような装飾…資金難を窺わせる全体的にチープな貴族趣味のアートワークもファスビンダーの強かさが見て取れやっぱりカッコいい…。

バルハウスの撮影とファスビンダーのちょっと作り過ぎの技巧的な演出とが相俟ったバッキバキの構図も見蕩れます…柱や階段の使い方は絶品…テラスでのグチャグチャに絡まった人間饅頭、俯瞰から見下ろすショットにはやられちゃいますෆ*

ハンナ・シグラのモンローファッションもセクシーですが…可愛らしさが勝っちゃうなぁ〰︎レイ・チャールズの曲に乗せて身体をゆらゆら〰︎ファムファタールっぷりも健在です…。



そしてファスビンダーお得意の倒錯性を帯びた緩やかな崩壊劇も堪りません…。


 「完全に壊さないと幸せになれない気がする…」
  


《ファスビンダーにとっては【絶望】こそが限りない活力の源》 
ー ファスビンダー インタビュー集より ー
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