半兵衛

愛のそよ風の半兵衛のレビュー・感想・評価

愛のそよ風(1973年製作の映画)
3.9
初老に達した中年男性と若い娘の恋物語という非現実なお話を、クリント・イーストウッド監督は美しい映像やミシェル・ルグランの上品なスコア、そして70年代特有の乾いた空気を生かしてファンタスティックでビターなラブストーリーとして見事に仕上げた。

あと主役がクリント・イーストウッド本人ではなくウィリアム・ホールデンというのもポイントだと思う、いかにもイーストウッドが演じそうなプレイボーイで渋いキャラなんだけどこの作品が発表されたときイーストウッドは四十代だったのでホールデンに主役の座を明け渡したのだろうと想像する。ただ実際問題イーストウッドが五十代のとき結構な肉食系オーラが醸し出されていたので枯れた雰囲気のドラマとマッチしなくなる可能性があったのでいい感じに初老のオーラが出ているホールデンで正解だったのかも。

随所に結構笑える場面や台詞が多く配され、中年になった人間のリアルな愚痴とともに年齢差のある気恥ずかしいドラマに絶妙なバランスをもたらす。あと主人公のホールデンの友人がくたびれた中年の雰囲気をコミカルに表現していて○、パーティーで自分が作ったカクテルを味を確認すると称して勝手に飲んでしまうのに爆笑。

ただ良質のドラマではあるけれど美しいヒロインケイ・レンツに対する視線が単なるドラマを盛り上げるものではなく、彼女に対する偏執的な愛を感じさせるものがあるので見ていて少し気味が悪くなってくる。作品のメッセージも「俺のようなイケメン中年が若い娘好きになって何が悪いんだ!」というイーストウッドのストレートでナルシストが入った感情がにじみ出ているものだし。そう思うとあのラストは監督の愛と妄想がスパークしたものなのかも。

イーストウッド監督本人もエキストラでほんのちょっと出演しているが、イケメン風の演技をして目立っているのが笑える。
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