ドント

お色気SL大暴走!アメリカ横断ウルトラハイホーのドントのレビュー・感想・評価

3.6
 1984年。再々見。義父である鉄道王の遺言によって旧式の汽車を直し、ニューヨークからテネシーまで24時間で走らせないと遺産がもらえなくなった小悪党のオッサン(ジョージ・ケネディ)と、汽車に乗ったその妻と娘、愛人、お抱えのフットボールチームとチアガールズ、チョンマゲ用心棒のハシモト、絶対にトレイを落とさないウェイター等々が繰り広げるドタバタを描く。
 完全にふざけきった邦題だが原題はジャズ・スタンダードと同題の『チャタヌガ・チュチュ』。「お色気」とあるけれどチアガールズが踊ったりわざと下着姿になるくらい(どういう意味でわざとなのかは秘密)。ギャグもほのぼのとしていて、脚本もよく出来てるんだか予定調和なんだか雑なんだかわからず、全体にとにかくゆるく、ぬるく、おおらか。
 しかし映画としてはダラけていないのが偉い。薄っぺらなキャラたちによって、善人がだいたい上手くいき悪い奴が失敗するという雑ながらもわかりやすい進展・着地を見せるドラマが逆にすごく心地よく、無駄にカネや技術が投入されている贅沢さも良きアクセントに、真夏のソーメンかお粥のようにスルスルいけてしまう。そしてエンドロールはほのぼのNG集。そういう作品。
 ピッチリ作り込まれている映画、一部が尖っている映画、あるいは観ていられない映画や無の映画はたくさんある。本作にはそれらにはない独特の丸みがある。適度に面白くて、「あぁ面白かった」と言って終われて、スカートを履いたジョージ・ケネディとか鉄路爆走自動車とかかわいい双子とかがちょっと記憶の隅に残る。変な言い方だけど途中でスマホとか観ても全然怒られない雰囲気が漂ってくる。胃にやさしい映画なのだ。
ドント

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