イチロヲ

ヒッチコックのゆすりのイチロヲのレビュー・感想・評価

ヒッチコックのゆすり(1929年製作の映画)
3.5
正当防衛による殺人行為を犯した恋人を守護するべく、若い刑事が粉骨砕身していく。チャールズ・ベネットの戯曲を映像化している、サスペンス映画。

イギリス初のトーキー作品だが、サイレントを前提として製作されたため、サイレントとトーキーの演出が混在している。後にヒッチが確立させることになる演出法の数々は、サイレントとトーキーの混在から生み出されたものだということが理解できる。

アパート内における縦移動のカメラワークと、殺害シーンにおけるカーテン越しのワンカット映像が、サイレント的演出。一方、他人の「ナイフ」の言葉に過剰反応してしまう場面が、トーキー的演出。加害者と被害者の心理が振り子のようになるところが面白い。

だが、個人的な感情によって殺人行為が不問にされる展開は、どうにも腑に落ちないものがある。これに関して、ヒッチ自身も気にかけていたようで、「商業映画ではヒロインを貶めることは許されない」と語っている。
イチロヲ

イチロヲ