ぬるこだま

少年と犬のぬるこだまのレビュー・感想・評価

少年と犬(1975年製作の映画)
4.8
シニカルでかしこい!喋る!いぬ!!!!こんなにずっと映してくれるのか!!!ありがとう!!なのが前半
自分好みのいろんな作品の元ネタになっていることが良くわかった
以下はそれ以降の内容に触れる話

ポストアポカリプスの世界で地下に引きこもって未だ文明的な生活を送っている”善良”な市民はまともに妊娠すらもできなくなっていて、
デカい声に黙って従わず風紀を乱す人間が「敬意の欠如、権威への不服従」の罪状において片端からカジュアルに裁かれていく様は
これが古い価値観のカリカチュアであるという事実と反して、あるいはだからこそ、近年の政治的に正しいアルファベット最強世界の行き着く先として妙に具体性を帯びてきたように思えてウケるね

でもまあ設定全般と肝心なこの地下世界シーンの映画的な観せ方は短編が原作だからか、予算の少なさが影響しているのか、今でこそ数多あるこの手のSFの中では全然大したものではないと感じてちょっと退屈だったかな

そしてエンディングに関して言えばこれまで観てきた映画の中で一番と言っていいほど好みだったんで予想外の収穫だった

野蛮であっても自然な生が営まれている場所を望む主人公は応援できたし
散々射精したがっていた坊やが都合良く立ち居振る舞いを変える雌犬に<テイスト>な判断を下してスッキリする結末(これがブラックコメディだというのを差し置いた上で、ブラッドが雄と仮定してホモソーシャル的だって怒られるかもしれないけれどさすがに自業自得じゃない?それにそうしなければみんなが心に傷を受ける描写を観ることになっていたはず)を選んでくれたことに拍手したくなったよ、幸せにね