半兵衛

リリスの半兵衛のレビュー・感想・評価

リリス(1964年製作の映画)
4.2
精神病院に勤めることになった主人公のウォーレン・ベイティが、妖艶さと純真さをあわせ持つジーン・セバーグ演じる不思議な患者に惹かれてどんどん均衡を崩していく一種のファム・ファタール。

この手の主人公は大抵健全な精神の持ち主で、異常性のある人間に導かれて精神を崩していくのだけれど今回の主人公であるウォーレンは最初から何処かおかしいのがポイント。時折変なリアクションをとったり、挙動不審になったりするので見ているこちらも不穏な雰囲気になってくる。

それに加えて突如次の場面に飛んだりする不思議な編集や、白日夢のような白黒映像、時折無音になったり意味不明なシーンが出てきたりするなどの演出、病院内の不可思議な世界がまるで主人公が精神を蝕まれている様をダイレクトに体験しているような気分にさせる。

母性と奔放さ、知的さと幼児性を感じさせるジーン・セバーグの好演も見る人にこの異様な物語に説得力をもたせている。ことさらに彼女が七歳の子供にキスしたり耳を噛んだりして誘惑するシーンの見ては行けないものを見たような感覚。

主人公同様何かが壊れていくのが実感できるラストの怖さ、まるでこの映画を見終わったとき自分もおかしくなっているのではという気分に大抵の人はなるはず。そういった意味では唯一無二の映画かも。

1964年という時代にも関わらず、まるでベトナム戦争以後の雰囲気を感じるのは気のせいか。
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