スガシュウヘイ

ブーリン家の姉妹のスガシュウヘイのレビュー・感想・評価

ブーリン家の姉妹(2008年製作の映画)
4.0
「少女は王子様と結婚し幸せに暮しましたとさ😊」

本作を見れば、こんなセリフがおとぎ話であることがよくわかる。本当の地獄は王室に入ってから始まるのだ😱

特に本作は、ほぼ史実通りだから、見てられない🙈可哀想😢ではあるけれど、しっかり見たほうがいいのかも。
ヨーロッパ王室の現実を。

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16世紀といえば、日本は織田信長が活躍した戦国時代(アンが王女になった翌年、信長生誕)。
その頃、イギリス国内もある意味戦国時代だったわけですな。

この頃ヨーロッパでは、宗教改革が流行っていて、カトリックに不満や疑問を抱いた人たちが、新教を結成し、主にドイツやフランス、オランダなどで対抗姿勢を見せていた。

そんな中、とんでもない理由で新教を作ってしまった国がある。それがイングランドだ。
国王ヘンリー8世は、妻のキャサリン・オブ・アラゴンと離婚したいという理由で(カトリックは離婚NG)イングランド国教会なる新教を立ち上げ、自らがトップとなった。

しかし念願叶って結婚したアンにもすぐ飽きてしまい、邪魔になったアンを幽閉し、罪をでっち上げて斬首。(たぶん本当にアンは無実。アンは頭が良かったので、危険を感じて斬首したという説あり)アンの侍女ジェーン・シーモアと結婚。

ジェーン・シーモアは、男児(エドワード6世)を生むが、そのあと死んでしまう。当時の出産は命懸けなのね。

その後、天才宮廷画家ホルバインの書いた肖像画をみて、「この娘かわいい、妻にしたい」と言い出し、4番目の王妃アン・オブ・クレーヴズと結婚するも、実際会ってみたら「肖像画と違う」という理由で離婚(諸説あり)、ホルバインを追放。婚姻期間6ヶ月。


5番目の王妃キャサリン・ハワードは、たぶん本当に浮気して斬首。

6番目の王妃キャサリン・パー。この人は本当にしっかりしたいい人だった。当時低い身分になっていたキャサリン・オブ・アラゴン(第1王妃)の娘メアリーと、アン・ブーリン(第2王妃)の娘エリザベスにも愛情を持って接し、王位継承権を回復させる。ヘンリー8世は、この人の時に崩御する。

この人がいなかったら、エリザベスに王位は回って来なかったかも。

というわけで、すごい結婚と離婚・処刑を繰り返してんのね、ヘンリー8世。

そして、一番皮肉なのは、こんなに男児を望みながら、なんとアンが生んだ娘が、イングランド史上最高の名君とも言われるエリザベス1世となること。
男にこだわる必要なかったじゃん。

アン・ブーリンは確かに悲劇の王妃だ。しかし、神は最後にエリザベス1世というプレゼントを与えていたのですね。
裁判では有罪だったアン。でも神はちゃんと見ていたんだと思う。
「エリザベス1世の母親」という肩書きで永久に歴史に残り続けるアン・ブーリン。我々はあなたのことを忘れることはないでしょう。

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豪華絢爛な衣装、舞台、そして俳優陣。
史実を活かしつつドラマチックな脚本。特に、有名なアンだけではなく、妹メアリーにも焦点を当て、ダブルヒロインとしたところは素晴らしい。これでストーリーがより立体的になった。

これほどの名作とは思いませんでした。あっぱれ。


公開:2008年(米・英)
監督:ジャスティン・チャドウィック
出演:ナタリー・ポートマン、スカーレット・ヨハンソン