TAK44マグナム

猟奇!惨殺魔/ザ・ミューティレーターのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

3.0
そんなバカ息子は殺っちまうにかぎるぜぇぇぇ〜〜!!


今日はパパの誕生日。
優しいママはバースデーケーキを作ってます。
パパが喜ぶことって何だろう?
そうだ、猟銃の手入れをしておいてあげよう!きっとパパ喜ぶぞ!
フキフキ、キュッキュッ、細かいところまでピッカピカ!

ドゴーーーンッ!!!
あ!しまった!引き金引いちゃった!
ドバッッ!!!
あ!ママに当たっちゃった!
ママが死んじゃった!!

・・・というわけで、そこへ猟から帰ってきたパパはびっくり仰天!
「何やらかしてくれてるんじゃ〜っ?!」
と、バカ息子をぶっ飛ばし、ママの死体としんみりする パパ・・・なんだか可哀想!
弾丸装填したまんまのアンタもアンタじゃねえかとも思いますが、それはスルーしてパパさんは悩みまくります。
バカ息子を絞め殺す妄想にふけったりしているうちに数年が過ぎ、バカ息子も一山いくらの大学生となっておりました。

折しもこれから秋休み、仲間たちと何も予定がないと困っていたところへ、パパから「冬の前に別荘の片付けをしとけ」との連絡がはいります。
こりゃちょうど良いとばかりに皆んなで別荘へ行くことに。
しかし、そこではバカ息子に最愛のひとを奪われたパパが手ぐすね引いて待ち構えていたのでした!
なんとか我慢しようと努力はしたものの、ママを殺してしまったことを悔いる様子もなく(←本当に無い)、あまつさえ自分は彼女をつくってイチャイチャしているバカ息子を見たパパさんはキチガイオヤジへとメガ進化!
戦斧や鉤竿、芝刈り機などを殺戮武器に、ボンクラ仲間たちもついでに皆殺しだぜぇぇぇ〜〜っ!!
と、いきり勃つのでありました!

というわけで、いきなり緩〜いカントリー調のテーマ曲で始まる虐殺オヤジの泣かせる復讐劇!
しかも相手は自分の息子ときたもんです!
いつものスラッシャーホラーのセオリー通りに、ひとりひとり若者が殺されてゆくのをひたすら見せられますよ。

しかし、せっかく殺され方にバリエーションがあって、しかもしっかりとネチっこく見せてくれる割に盛り上がらないのはどうしたことか。
それは、まったくスリリングじゃないモッサリした演出と、一番痛いのは殺され演技がド下手なせい。普段の演技も下手だけども肝心の殺される場面も上手くないので、ただ死体が増えてゆくだけでしかないのです。
しかも尺の割にはボディカウントもさほど多くはないから前半は退屈で、観ているこちらがもう死にそう。

まぁ、バディ・クーパーなる誰も知らない監督(監督の前説入りで観ましたが、人の良さげなオッサンでした)の自主映画みたいなものなので仕方ないところもあるのでしょうが、すべてが10年履いたパンツのゴムなみにユルユルなんですよね、この映画。
プールの場面、長過ぎない?
あの水中隠れんぼ必要?
謎ルールの真っ暗隠れんぼも要る?
ってか、隠れんぼばっかりやってるよ、これ(苦笑)
とにかく冗長で、バカ息子たちがキャッキャやってるところと、隠れ潜んでいるキチガイオヤジがフーフー言っているのを交互に見せてくだけ。

それでも、殺人が本格的になってきてからは盛り返してきますが、やっぱり淡白な演技のせいで台無しなのでした。
内臓デロ〜ンや首チョンパ、巨大なフックで股間から腹を突き破るなど、やっていることはスーパーゴアなので本当に勿体ないことこの上ない。

こういった映画に付き物のセックスシーンはありそうで無いのに、何故か「ファイナルガールは処女」という古のスラッシャーホラールールは健在で、そんなファイナルガールとバカ息子が必死こいて逃げようとするクライマックスからは、映画に勢いがついて俄然面白くなります。
何が何でも逃げようとする2人と、何が何でもブチ殺そうとするオヤジの攻防戦が、相変わらずモッサリとはしているものの狂気が感じられて良い感じですよ。
特に、真っ二つにされたオヤジがそれでも刃物をふりまわす姿は狂いっぷりが尋常じゃなくて素晴らしかった!
ギャーギャーわめきながら反撃するファイナルガールも、彼女だけは演技がマトモでした。

バカ息子は最後までバカ息子っぽかったので、「おまえはおとなしく殺されとけ!!」と、いつの間にかオヤジのほうを応援している自分がいましたよ!
バカ息子、普通に良いヤツでもあるんですが、なんか好きになれないキャラだったんですよね〜。
顔もやたら濃いし。

それにしても、なんで最初から殺人鬼の正体を隠さなかったんでしょうね?
こういう体裁のスラッシャーホラーって、殺人鬼が誰なのか分からないのもウリにするものなんですけれど、本作はバレバレで隠そうとしていません。
これ、うまく隠しながらいければ、最後の「父さんなのか!」が最大限に活きたと思うのですがね。個人的にミステリー風味も好きなので、そこが一番の残念ポイントでありました。

なんというか、80年代に埋もれたままでも別に良かったんじゃないかと思う一作ではありますが、妙な味があるのもまた事実。
田舎のスラッシャーホラーなら、どんなんでもどんと来いや!という奇特な方なら楽しめると思います。
ブルーレイ購入している時点で、これ書いてる本人も充分に奇特ですけれどね〜(←自虐的?)


セル・ブルーレイにて