まず最初に断っておきますが、覚悟のない人にはオススメしません。
ツッコまれるために存在するポンコツ映画の典型。みんなでワイワイいじりながら見るのが正しい鑑賞法。そういう意味では「愛される映画」と言える。
自分が作ったわけでもないのに、たまらなく恥ずかしい気持ちになってしまう「新手の羞恥プレイ」とでも言うべきか。
最初から最後までトホホ映画なのに、だんだん目が離せなくなってくるから不思議だ。あまりのクズっぷりに、内なるＳにスイッチが入ってしまい、コキ下ろして発散したくなるのかも。
以下、箇条書きで恐縮ですが、コキ残すことで気持ち良くヌカせていただきます（後は各自お好みで追加よろしく）。
・イタリアにもあったか「宇宙からのメッセージ」。しかもロジャー・コーマンpresents。さもありなん。でも、意外とカネかかってるぞ、これ。ヘタクソなだけで。
・ウォーズでもゴードンでもない「クラッシュ」という隙間というか裂け目を巧妙に突いたタイトル。その割にはピンとこないし響かないのが哀しい。
・オープニングの仰角な巨大宇宙船に既視感あり。かつて大阪の映画館で予告編の前に必ず流れてた「千房」のＣＭのパクリか。他には思い浮かばない。
・オープニングテーマがいい感じで盛り上がり始めた途端にブチ切られて本編に入るという拍子抜けの斬新さ。しかも同姓同名ではないジョン・バリー in person。一体何があった？
・宇宙空間は昭和のフーゾク街のようなネオン臭。「ブラック・レイン」に先んじて道頓堀でロケしたか？ てことは、やっぱり千房か？
・宇宙船やスペースシティの質感は、夏祭りの夜店の景品にも似たノスタルジー。
・ゲイ顔というか洋ピン顔というか、揃いも揃って今にもおっ始めそうな面構えのキャスト。
・掃除機みたいなデザインのロボット。椅子でズッコケたり、休日のショッカーみたいに中腰で屈んでヘコヘコと歩く姿は、ある意味、進化を究めたか。
・お魚をモチーフにしたデザインの宇宙船の数々、私は嫌いじゃない。質感を除けば、かなり凝った作りだぞ。
・未来をすべて知ってるくせに教えてくれない相棒。そもそもお前は何者だ？ アンドロイドか、人工知能か、異星人か。へっぴり腰で果敢にライトセーバーを振り回す姿に謎はますます深まる。
・アマゾネス軍団が出てくるくだりは偏差値の低い女子高のプールサイドみたいで生ぬるいが、ジャンピング原始人の集団が襲いかかってくる辺りから俄然盛り上がってくる。仮面ライダー的なカメラアングルに、昭和の中２ならアツくなるはず。
・さっきから、見たことある場所を何度も通ってますが、何か？
・ハン・ソロより遥か昔に冷凍され、かつ解凍されたヒロイン。この映画で最も美しいシーンかも。水、滴ってるし。冷凍庫の奥で忘れられて霜ったアイスキャンデーみたい。
・掃除機ロボットの殺され方が、ゴミ置き場の真空管テレビみたいに無惨な扱い。火花飛び散り配線を晒すガラクタっぷりは、もはや爆笑の果てにある分厚い壁を軽く突き破って、哀愁の彼岸に到達。
・出会って10分もしないうちに、「今まで言いそびれていた」と隠していた身分を白状するナイトライダー皇太子。
・「爆発まであと８分」という部下からの報告を、敵に「お前たちに残された時間は１時間もない」とオブラートに包んで伝える悪の帝王。
・さっき司令部の窓ガラス、パリンて割れましたけど、大丈夫？
・遠くから撃ち込まれたというより、手前から投げ込まれた感じの魚雷。「どっこいしょ」って。攻撃というより、近所の嫌がらせ。
・めくるめく段取り芝居の中、ただ一人、場違いなまでに重厚な演技を見せるクリストファー・プラマー。途中で怒って帰らなかったのはエライ。当時すでにビッグ・ネームだっただけに、こんなのにさえ出なければ本家のシリーズから声がかかっていたかもしれないのに（ちなみに「フラッシュ・ゴードン」で皇帝ミンなんか引き受けた大御所マックス・フォン・シドーでさえ、本家のエピソード７に呼ばれてたのに）。
・対する悪の帝王の演技の、これまたペラいことよ。でも、一番楽しんでそう。
・途中から出てきて大して活躍してないヒーローと無事生還したヒロインが抱き合う大団円。あれだけ尽くしてきたお掃除ロボのリアクションは、コメディ史に残るレベル。
【まとめ】
十人並みのルックスで頭も悪くてドン臭くて体臭もキツいんだけど、精一杯尽くしてくれるから、意外と離れられなくなる異性みたいな映画でした。
芸一筋のドアホ落語家が怒鳴りつけたり殴ったり足蹴にしたり、夜中に酒買いに行かせたりしても、酔いつぶれて寝ている姿に毛布をかけてくれるような健気な映画ってとこかな。
